『家庭教師のトラコ』鈴木保奈美が強烈な演技 『ちむどんどん』を彷彿とさせるシーンも

 橋本愛が主演を務める連続ドラマ『家庭教師のトラコ』(日本テレビ系)にとって、第3話が序盤を締めくくる回となることは、ここまで順を追って観てきた視聴者であれば容易に予想できた展開だろう。

 それは、トラコ(橋本愛)が家庭教師を務めるのが3つの家庭であること、そしてトラコの決め台詞「私には嫌いな言葉が3つある」と彼女の周りには決まって「3」の数字が多く登場しているからだ。第1話で「1万円で幸せになる方法」を教えた中間層の中村家、第2話で「5千円の正しい使い方」を身を持って理解させた貧困層の下山家に続き、第3話で描かれるのは富裕層の上原家。「20万円必勝投資術」をテーマに、高校3年生の守(細田佳央太)は密かにお笑い芸人を夢見ていると、なかなかに面倒くさい家庭である。

 トラコが中村家は「遊園地と流しそうめん」、下山家は「転校とバラ」という突飛な授業で子どもたちの潜在能力を引き出してきたのであれば、今回の守に当てはまるのは「お笑いライブ」となる。トラコは授業料の20万円で、守にお笑いライブを開催することを勧める。20万円で満員のサクラを雇い、爆笑に包まれる光景を見せて母・里美(鈴木保奈美)を納得させるという作戦だ。ピン芸人である守の芸風は漫談に始まり、やがて体を張るリアクション芸とお世辞にも面白いと言えるものではない。サクラが書いたアンケートの結果は散々な言われよう。それでも、ただ一人の観客である母親の心だけは「がんばってた」と動かすことができたのだ。

 父・利明(矢島健一)や義理の兄、姉たちからは恥晒しだと厄介払いされ、海外留学を決断していた守だったが、少なからず応援してくれている里美の本当の思いを知り、再び上原家に戻ってくる。たとえ大勢に笑われようとも、母親さえ味方でいてくれれば頑張れるーーそんな息子の言葉に、夫の言いなりでしかなかった里美も利明の説得に乗り出す。

 普段は守と正反対のキャラクターだという細田佳央太の演技も目を見張るが、「わんつか待で!」と強烈な津軽弁を言い放つ鈴木保奈美も強烈だ。疎外感と劣等感を抱いていた夫たちに向けて、東大に合格させて、さらにお笑い芸人としても成功させると宣言する。そこにあるのは息子を信じてあげたいという母親としての愛情。一方で、難解な津軽弁を翻訳するのはトラコの役目。理解できそうでギリギリ何を言ってるか分からない訛りと、途中で鼻をすするほどに役に入り切っている鈴木のシリアスな演技のギャップがまたシュールな笑いを生んでいる。

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