『バズ・ライトイヤー』飛行テストが暗示する“人生の持ち時間” バズの苦悩が胸を打つ
また、バズが仲間と共に危機へ立ち向かい、状況を打破していく場面もすばらしい。彼は仲間との関係性を通して成長する。惑星で一生を終えた人びとの暮らしを肯定し、それもまたかけがえのない人生だったのだと納得することで、過去の失敗を乗り越えるのだ。ほろ苦いエンディングだが、主人公の精神的な成長が感じられる締めくくりではないだろうか。
自分の人生にはほとんど無限の時間があると思っている子どもに、バズの飛行テスト場面の切実さや、見知らぬ惑星での暮らしを肯定するまでの苦悩がどのくらい伝わるのかはわからない。しかし、本格SF映画のモチーフを多用しながら、あっという間に過ぎてしまう人生を少しでも有意義なものにしようと主張する『バズ・ライトイヤー』は、私にとってかけがえのない作品となった。
アンガス・マクレーン監督はこう述べる。
「瞬間瞬間の時間こそが、人間である私たちにとってのすべてです。そして、その瞬間を共有している人々と繋がることもまた、人間であることのすべてです。与えられた1日を精一杯、受けとめて、毎日を生きる。それは私が自分自身の人生の中でも探求したかった考え方なのです」(※)
監督の言う「毎日を精一杯生きる」とは、映画のテーマとしてはややひねりがない、直球すぎると思われるかもしれないが、私自身、年齢を重ね、人生の残り時間が少なくなっていくほど、「現状のなかでベストを尽くすしかない」とごく当たり前のことを考えるようになった。この映画を子どもが好きになってくれるかどうかはわからないが、『バズ・ライトイヤー』のがむしゃらさには、私の心を揺さぶる何かがあるのだ。
参照
※ 『バズ・ライトイヤー』公式パンフレットより
■公開情報
『バズ・ライトイヤー』
全国公開中
監督:アンガス・マクレーン
製作:ギャリン・サスマン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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