『東京リベンジャーズ』『ハコヅメ』など漫画の実写化とアニメ化、アプローチの違いは?

 漫画原作の映像作品は多々あるが『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』(以下、『ハコヅメ』)や『東京リベンジャーズ』のように、実写とアニメの両方が作られるケースも近年は増えている。

TVアニメ『東京リベンジャーズ』公式サイトより

 かつてはアニメ化される漫画と実写化される漫画は明確に分かれており、ファンタジー色の強いバトルモノはアニメ化され、現代を舞台にしたリアルな物語は実写化されることが多かった。

 しかし、CGやVFXの発展によって、かつては難しかったファンタジーやバトルモノの実写化も可能となり、人気ファンタジー漫画『ONE PIECE』(集英社)の実写ドラマ化もNetflixで予定されている。一方、アニメでも『けいおん!』や『聲の形』のような、現代を舞台にしたリアルな物語が作られる機会も増えており、そういった作品が抵抗なく視聴者に受け入れられている。

 実写とアニメの両方を手掛ける映画監督の押井守は「すべての映画はアニメになる」(※)と語っていたが、両者の境界はだいぶ曖昧なものとなってきている。だからこそ、同じ漫画原作から実写化とアニメ化という異なるアプローチが登場し、それが多くの観客に受け入れられるという状況が生まれているのだろう。

 岩明均の『寄生獣』(講談社)のような、名作漫画が連載終了からしばらく経ってからアニメ化と実写映画化が同時に行われたプロジェクトも存在するが、このようなケースは稀で、映像化される作品の多くは現在、雑誌やアプリで連載中のものだ。連載の人気が安定しコミックスの売上が軌道に乗った後、新規読者を開拓するための手段がアニメ化、実写化であり、ゴールとして劇場映画があるというのが一般的な流れだ。

 アニメやドラマを観たことをきっかけに原作漫画に興味を持った人が、コミックスをまとめ買いして、続きを読むために連載を追うようになる。少し前なら『進撃の巨人』、最近では『鬼滅の刃』、『呪術廻戦』、『東京リベンジャーズ』、といった作品は、映像化をきっかけに新規ファンを獲得し、コミックスの売上を激増させている。その意味で漫画の映像化は「絵柄が苦手」などの理由で漫画を手に取らなかった観客に向けての「翻訳」という側面が大きい。

 だからこそ、近年のアニメ化は、可能な限り物語を原作に忠実な形で進めていき、美麗な映像を用いて、劇中の情報をわかりやすく整理して描くという方針で作られている。

 物語もオリジナル展開で強引に完結させたりはせずに、エピソード単位で綺麗にまとめ、海外ドラマのようにシーズン2、シーズン3とその都度、映像化していくケースが増えている。このような、原作漫画の「再現」は、実写のドラマや映画よりも、テレビアニメの方がはるかに向いている。そもそも、ページを“めくる”ことによって時間が進む漫画と、観ているだけで時間が流れていく映像作品とでは、物語の展開方法が大きく異なる。

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