『ある画家の数奇な運命』7月29日よりTOHOシネマズ 日本橋にて期間限定で再上映

 2020年10月2日に日本公開されたドイツ映画『ある画家の数奇な運命』が、7月29日よりTOHOシネマズ 日本橋にて期間限定上映されることが決定した。

 第75回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、第91回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた本作は、『善き人のためのソナタ』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督が、現代美術界の巨匠であり、ときにオークションで数十億円の価格がつくアーティスト、ゲルハルト・リヒターの半生をモデルに、祖国ドイツの“歴史の闇”と“芸術の光”に迫った人間ドラマ。

 ナチ政権下のドイツ。少年クルトは音楽を愛する叔母(ザスキア・ローゼンタール)の影響から、芸術に親しむ日々を送っていた。ところが、もともと繊細な感情の持ち主だった叔母は突如日常の精神のバランスを崩し、強制入院の果て、ナチス国家によって行われていた精神を患う患者への“安楽死政策”によって命を奪われる。終戦後、クルト(トム・シリング)は東ドイツの美術学校に進学し、そこで出会った美しい女性・エリー(パウラ・ベーア)と恋におちる。しかし、実は元ナチ高官の彼女の医者の父親(セバスチャン・コッホ)こそが叔母を死へと追い込んだ張本人だった。そして、誰もその残酷な運命に気づかぬまま二人は結婚。やがて、東ドイツのアート界の共産主義的思想に疑問を抱いたクルトは、ベルリンの壁が築かれる直前に、エリーと芸術の自由を求めて西ドイツへと逃亡する。晴れて美術学校で創作に没頭することになったが、教授からこれまで作った作品を全否定され、もがき苦しむクルト。だが、死によって離れ離れになっても魂に刻み続けていた、音楽を愛していた叔母の「真実はすべて美しい」という言葉を信じ続けていたクルトは、ついにその言葉に導かれるように、自分だけの芸術の表現方法を発見、新作を完成させる。しかしそれは、罪深いナチ高官としての過去を隠し続けた義父を震え上がらせる作品でもあった。

 ドナースマルク監督が、リヒター自身の著書や伝記に魅せられて映画化を申し込んだところ、1カ月にわたっての取材が許された。ただし、映画化の条件は、人物の名前は変えて、何が事実か事実でないかは、互いに絶対に明かさないこと。そんな契約の元、リヒターの代表的なシリーズの一つである、精密に模写した写真のイメージを微妙にぼかす「フォト・ペインティング」が誕生するまでの過程がドラマティックに描かれる。

 なお現在、日本では16年ぶり、東京では初となるリヒターの個展が東京国立近代美術館(東京・竹橋)で開催中。パッケージ化されず鑑賞機会の限られていた本作だが、個展開催を機に今回の再上映が決定した。

■公開情報
『ある画家の数奇な運命』
7月29日(金)より、TOHOシネマズ 日本橋にて期間限定上映
監督・脚本・製作:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
音楽: マックス・リヒター
撮影: キャレブ・デシャネル
配給:キノフィルムズ/木下グループ
原題:Werk ohne Autor/英題:Never Look Away/2018年/ドイツ/ドイツ語/189分/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/日本語字幕:吉川美奈子/R-15
(c)2018 PERGAMON FILM GMBH & CO. KG / WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG
公式サイト:neverlookaway-movie.jp

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