佐津川愛美が“ニーニー”を成長させる唯一の存在に? 朝ドラ3作目の安定感に期待

 『ちむどんどん』(NHK総合)第8週では、ヒロイン・暢子(黒島結菜)の兄・賢秀(竜星涼)が怪しい健康食品ビジネスに手を出すもまたしても騙されていたことがわかり、猪野養豚場に戻る様子が描かれた。

 元々、ボクシングジムから姿をくらました賢秀が働き始めたのが猪野寛大(中原丈雄)とその娘・清恵(佐津川愛美)が営む養豚場で、やっと真面目に働き始め落ち着くべきところに収まったかと思いきや、給料の前借りをしまたビッグチャンスを掴むための放浪に出てしまう。そして痛い目を見てまたこうして出戻ってきたのだった。

 しっかり者の清恵とルーズで地に足の着いていない賢秀とは水と油のような関係で、2人が繰り広げる丁々発止の口げんかがまた面白い。清恵演じる佐津川の黒目がちな瞳に真っ直ぐ捉えられ問いただされると、普段はヘラヘラしている賢秀も流石に逃げ切ることができないだろう。なんだかんだ2人は良いコンビかもしれない。そして佐津川の可愛らしく張りのある声色ゆえに、少しくらい問い詰めたところで嫌味っぽくはならず、ただただ清恵の持つ真っ直ぐさが際立つのもまた適役だと思える。

 佐津川は、『梅ちゃん先生』『スカーレット』に続き、本作が朝ドラ出演3作目。『梅ちゃん先生』では、ヒロイン・梅子(堀北真希)の夫となる信郎(松坂桃李)の交際相手の宮田咲江役を演じたが、彼が自分よりも梅子の前で本音で話す姿に別れを決意する役どころだった。同じく『スカーレット』でもヒロイン・喜美子(戸田恵梨香)の初恋の相手・酒田圭介(溝端淳平)が一目惚れする泉田あき子役を好演。喜美子の計らいで彼と交際を始めるも、圭介の話に度々登場する喜美子に嫉妬する役どころを担った。改めてこうして振り返るとこれまでの朝ドラ2作品では、ヒロインと近しい男性と恋に落ちるキャラクターを務めてきた。

 佐津川といえば、強烈な存在感を放ったのは映画『ユリゴコロ』で演じた、主人公・美紗子(吉高由里子)の友人で共依存関係から恋愛関係に発展するみつ子役だろう。これまでの可憐で溌剌としたイメージを一切封印。虚げな目と危なっかしい空気感を終始身に纏い、周囲と溶け込み切れていない歪さや、自分でも持て余しているみつ子の満たされなさや狂気を一瞬にして立ち上らせていた。

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