『オビ=ワン・ケノービ』ユアン・マクレガー、これまでの幅広いジャンルでの活躍を振り返る

 5月27日から、ディズニープラスでドラマ『オビ=ワン・ケノービ』の配信が開始される。主演を務めるのは、『スター・ウォーズ』新三部作で同役を務めたユアン・マクレガーだ。『スター・ウォーズ』シリーズの大人気キャラクターを主人公に据えたスピンオフドラマ、そして映画からのキャストの続投に、ファンならずとも期待せざるをえない。

ユアン・マクレガー(写真:REX/アフロ)

 マクレガーといえば、今年4月に結婚したことでも話題になった。相手は、ドラマ『FARGO/ファーゴ』(2016年)で共演したメアリー・エリザベス・ウィンステッド。マクレガーは1995年に美術監督のイヴ・マヴラキスと結婚しており、長い間ハリウッドでもおしどり夫婦として知られていたため、彼らの離婚、そして今回の結婚は注目を集めたのだ。

 ここのところキャリアの面でも私生活でも話題に上ることの多いマクレガーについて、これまでのフィルモグラフィーを振り返りながら魅力を探っていこう。

理解のある両親と順調なキャリアのスタート

 1971年3月31日、マクレガーはスコットランドのクリフで生まれた。両親はともに教師で、叔父のデニス・ローソンは『スター・ウォーズ』旧三部作にも出演している俳優だ。マクレガーは彼にあこがれて、幼いころから俳優になることを夢見ていたという。16歳のときに演劇を学ぶことを決意した彼は、高校を中退してパースのレパートリー・シアターでスタッフ兼エキストラとして働きはじめる。彼の両親は、夢をあきらめて不幸になるよりは、学校を辞めて夢を追ったほうがいいと応援してくれた。

 その後、1988年にマクレガーはロンドンのギルドホール音楽演劇学校に入学。同級生にはダニエル・クレイグなどがいた。1990年、同校の最終学年公演で彼の一人芝居を観たエージェントにスカウトされ、プロの俳優への道が拓ける。そして1993年、ギルドホール卒業直前にドラマ『Lipstick on Your Collar(原題)』の主役に抜擢され、テレビデビューを飾った。さらに同年、ロビン・ウィリアムス主演の『Being Human(原題)』(日本未公開)で映画デビューを果たす。それから彼が注目の若手俳優として世界に名を馳せるまで、それほど時間はかからなかった。

過激な青春を送る青年からジェダイ・マスターへ

『トレインスポッティング』 (c)Channel Four Television Corporation MCMXCV

 マクレガーは1994年、のちに盟友となるダニー・ボイルの長編デビュー作『シャロウ・グレイブ』に出演し、注目を集めた。そして1996年、同監督がメガホンをとり、スコットランドのエディンバラを舞台にヘロイン中毒の若者たちの過激な青春を描いた『トレインスポッティング』で、主人公マーク・レントンを演じる。ボイルと再びタッグを組んだ本作は、スタイリッシュな映像と音楽で若者の心をつかみ、世界中で大ヒットを記録した。ヘロイン中毒に陥りながらも、なんとか生活を立て直そうと悪友たちと縁を切ろうとするレントン。しかし結局は彼らの犯罪計画に巻き込まれてしまう。そんななか、マクレガーはレントンの抜け目のない性格を軽やかに演じてみせた。

 その後も順調にキャリアを重ね、1998年にマクレガーはもう1つの初期の代表作となる『ベルベット・ゴールドマイン』に出演。彼が演じたのは、アメリカのガレージロックの先駆者カート・ワイルドで、イギー・ポップをモデルにした過激なロックスターだ。ステージで全裸になるなど、常軌を逸したパフォーマンスをする一方で、主人公の新聞記者アーサー(クリスチャン・ベール)が追いかける70年代のグラムロックのスター、ブライアン・スレイド(ジョナサン・リース=マイヤーズ)と同性愛関係を持っていた人物だ。このキャラクターは、一見したイメージとは裏腹に意外とまともな性格で、その不器用さをマクレガーは実直な演技で表現している。退廃的な雰囲気が漂い、美しい男たちの愛憎が渦巻く世界で、彼のハンサムさも際立つ。

 レントンやカート・ワイルドなど、一見非常識なキャラクターでも、マクレガーの演技はいわゆる“怪演”と呼ばれるようなものではない。むしろ、内面の純粋さを引き出すようなストレートな表現が多い。これがマクレガーの持ち味と言っていいだろう。そしてその魅力が、彼のキャリアで最大の役へとつながっていく。

『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』ディズニープラスにて配信中 (c)2022 Lucasfilm Ltd.

 1999年、マクレガーは『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』で、オビ=ワン・ケノービを演じることになる。リーアム・ニーソン演じるジェダイ・マスター、クワイ・ガン=ジンのパダワン(弟子)であるオビ=ワンは、開口一番「嫌な予感がする」とシリーズの決め台詞とともに登場した。生意気で血気盛んな若者という設定は、どことなくレントンを思い出させる。『ファントム・メナス』の10年後を描いた『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002年)では、オビ=ワンは一人前のジェダイの騎士としてアナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)の師となる。

 このころには彼もクワイ・ガンと同様に誠実で穏やかな性格になり、交渉術やマインド・トリックと呼ばれる他人の心を操る術に長けるようになった。もちろん戦闘術も一流だ。反抗的なアナキンに手を焼きながらも、彼を導き見守ってきたオビ=ワンだが、アナキンの転落を止めることはできなかった。『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005年)では、ダース・ベイダーとなったアナキンと死闘の末に勝利したが、友人でもあったかつての弟子の変わり果てた姿に涙を流す場面もあった。その後はアナキンの妻であるパドメ・アミダラ(ナタリー・ポートマン)の出産に立ち会い、彼らの息子ルーク・スカイウォーカーの成長を見守りながら隠遁生活を送ることになる。

『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』ディズニープラスにて配信中 (c)2022 Lucasfilm Ltd.

 このパダワン時代から隠遁生活までのオビ=ワンの変化を、マクレガーは説得力を持って演じている。特に『ファントム・メナス』と『クローンの攻撃』は、物語のなかでは10年が経過しているが、その間にオビ=ワンに起こった変化を表現する一方で、無鉄砲さや師から受け継いだ自身が正しいと信じた道を突き進む性格など、パダワン時代から変わらない彼の本質を覗かせる。そしてアナキンとの関係で見せる優しさや繊細さは、これまでのキャリアで培ってきたマクレガーの魅力を存分に発揮できるチャンスだったのだ。

幅広いジャンルで光る説得力

 『スター・ウォーズ』シリーズと並行して、ユアン・マクレガーはさまざまジャンルの作品に出演している。2001年のミュージカル映画『ムーラン・ルージュ』では、作家志望の裕福な青年クリスチャンを演じた。『椿姫』や『ラ・ボエーム』を下敷きに、身分違いの恋を描いた本作で、彼は見事な歌声を披露し、コミカルな演技でロマンチックな若者を演じて見せた。その姿は個人的な愛、もしくは恋が禁じられているジェダイの騎士役では見せられなかったもので、多くのファンの心をつかんだ。『スター・ウォーズ』のイメージが強いせいかもしれないが、思えば彼のそれまでのキャリアで、ロマンチックな役柄というのはそれほど多くなかった。本作でマクレガーは、ゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル、コメディ部門)にノミネートされている。

BIG FISH (2003) - First 10 Minutes

 またティム・バートン監督の『ビッグ・フィッシュ』(2003年)では、数々の不思議な出来事に出くわし、奇妙ながらも魅力的な人生を明るく生きる青年エドワードを演じた。多少戸惑いながら、普通ならば理解し難い出来事を楽しむ無邪気で活き活きとした彼の表情は、観る者もわくわくさせる。本作はバートンのこれまでの作風から大きく方向転換するものだったが、観客に広く受け入れられたのは、作品世界にマッチしたマクレガーの演技があったからに違いない。

 これまでのイメージと大きく違うといえば、2009年の『フィリップ、きみを愛してる!』もそうだ。マクレガーが演じたゲイの青年フィリップはまさに可憐な乙女といった雰囲気で、まるで別人だ。ジム・キャリーが演じた主人公のスティーヴン・ラッセルでなくとも恋に落ちてしまうだろう。

 さらに同年の『天使と悪魔』では、ローマ教皇の補佐カメルレンゴのパトリック・マッケンナ役を演じている。バチカンで起きた枢機卿誘拐事件を解決するために招かれたラングドン教授(トム・ハンクス)にも信頼される彼は、事件の鍵を握る重要な役柄だ。スリリングなミステリーである本作の二転三転する展開で、カメルレンゴの存在感、そして影響力が物語を引っ張っていく。ひねりのなさがひねりになっている彼は、キャラクターの内面の純粋さを引き出すマクレガーの演技の説得力がなければ、成立しない役なのだ。

 こうして主演としても助演としても、マクレガーはさまざまなジャンルの作品に挑戦し、ともすれば「オビ=ワンの役の人」になってしまったかもしれないキャリアを、豊かなものにしていった。

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