『サマータイムレンダ』は繰り返し観たくなる SF設定が活かされたアニメ表現に注目
現在放送中のTVアニメ『サマータイムレンダ』は『少年ジャンプ+』にて2017年10月23日から2021年2月1日まで連載されていたSFサスペンス作品だ。
アニメでは、全13巻(139話)の原作を全25話(2クール)で完結と謳っている。推理要素も多く、コアなファンも多い話題の原作ということで、アニメでの見どころを掘り下げていく。
本作を掘り下げるにあたって、まず触れておきたいのは原作者・田中靖規についてだ。『赤マルジャンプ』2003年WINTER号にて『獏』でデビュー後、『週刊少年ジャンプ』などで読切・連載作品が数作掲載。
大学を卒業してから『瞳のカトブレパス』を連載するまで、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズで有名な荒木飛呂彦のスタジオでアシスタントを務めていたという経歴を持っている。
また、本作の舞台・和歌山県は田中の出身地でもあり、方言がとても特徴的で耳に残る。方言指導を担当するカイホリショータや田中、さらに小舟澪役の白砂沙帆、雁切真砂人役の小西克幸も和歌山県出身ということで、現場で丁寧に方言指導が行われていることを感じ取ることができる。
主人公・網代慎平(CV:花江夏樹)は東京に2年住んでいるという設定もあり、標準語で喋っていたり、どことなく方言にぎこちなさが出ているところにリアルさを感じられるのも良い。アニメで実際に和歌山弁を聴くことができるのも作品に引き込まれるひとつの要素になっている。
舞台となる日都ヶ島のモデルは和歌山市に実在する離島・友ヶ島。アニメでは海や山など島の豊かな自然が色鮮やか且つ、細かく描写されていて、アニメ化の醍醐味を存分に感じることができる。
実在する離島が舞台のモデルということもあって、聖地巡礼で友ヶ島に実際に足を運ぶことができるのも嬉しい要素だ。和歌山県の公式観光サイトでは『サマータイムレンダ』と連動した企画を展開されており、小舟潮役・永瀬アンナと小舟澪役・白砂沙帆によるデジタルガイドブックが公開されたりもしており、和歌山県全体で盛り上がっているのがわかる。
『サマータイムレンダ』は、『赤マルジャンプ』2018年WINTER号に掲載された田中自身の読切『ジャメヴ』が元になっている。「自分のコピー」が出てくるというストーリーは、本作の鍵となる「影」に繋がっている。
SNS上でも考察などで盛り上がりをみせている本作。特に「影」の設定がとても細かく、現在放送されている内容のほかにもたくさんの設定があることでストーリーにじわじわと深みを与えている。
たとえば原作では「影」であることをモザイク描写で表現しているが、アニメでは効果音も相まって「影」にスキャンされてコピーされているというデジタルチックな印象を強め、同時にSFっぽさも増す演出になっている。
このモザイク描写は「影」が現れたことを視覚的に捉えることができる要素でもある。この表現があることによって視聴者は「影」が出現したことや、その行動に臨場感や緊張感を感じることができる。これから起こるであろう出来事を想像し、手に汗握る展開もある。
逆にモザイク描写は「影」が倒される(殺される)シーンではモザイクとしての役割も果たしてくれていて、自然とグロテスクさを緩和させてくれているという点でも重要な要素となっている。
「影」が住人をコピーしているということで、キャラクターを演じる声優陣の演じ分けも必見だ。たとえば、明るくかわいい澪と、それとは対照的に冷徹な雰囲気を醸し出す「影」の澪。「影」にコピーされたキャラクターの細かな性質の違いを見つけるのも面白いかもしれない。