宇野維正の興行ランキング一刀両断!
Netflixバブルの崩壊より深刻? 『バブル』が実証した「配信作品の全国公開」の難しさ
先週末の動員ランキングは、前回のコラム(参考:今週末公開の新作は興行がまったく読めない「チャレンジ作」ばかり)で取り上げた新作3作品、『シン・ウルトラマン』、『流浪の月』、『バブル』がそれぞれ1位、5位、9位に初登場という結果となった。それぞれ数字を見ていこう。
初登場1位となった庵野秀明総監修・企画・脚本、樋口真嗣監督による『シン・ウルトラマン』の土日2日間の動員は45万人、興収は7億300万円。オープニング3日間の累計は動員64万1802人、興収9億9341万50円。公開初週の土日2日間の興収で比較すると、2016年7月に公開された『シン・ゴジラ』の112.5%、2021年3月に公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の59.7%という成績。先週末のコラムでも「庵野秀明のファンが押しかけることでとりあえずスタートダッシュは間違いない」としたように、ここまでは予想通り。注目すべきは、公開2週目、3週目でもまったく数字が落ちることなく、最終的に興収82.5億円まで積み上げた『シン・ゴジラ』のような興行になっていくかどうかだ。
続いて、初登場5位となったのは李相日監督、広瀬すず&松坂桃李主演の『流浪の月』。オープニング3日間の成績は動員12万7609人、興収1億7619万6640円。独立系のギャガ配給作品であるということもふまえても、過去の『悪人』や『怒り』といった李相日監督による小説原作作品と比べて鈍い出足だが、ウィークデイに入ってからは比較的落ちの少ない興行の推移となっている。現実的な目標は、興収10億円といったところか。
そして、Netflixで2週間以上前に先行で配信されている作品の、全国338スクリーンでの大規模公開ということで注目を集めていたアニメーション作品『バブル』は初登場9位。オープニング3日間の成績は動員4万6711人&興収6581万2930円という惨憺たる結果となった。
これまでもNetflixは、自社のオリジナル映画作品を限定的に劇場公開してきた。その多くは海外で賞レースのレギュレーションを満たすために期間限定で劇場公開された作品を、横並び的に日本でも公開するというかたちだった。国内メジャー系列のシネコンでは上映されず、上映館でも夜1回だけの上映ということも多く、劇場公開に関するプロモーションがまったくおこなわれないそれらの興行は、都市部に住む情報を熱心に追いかけている観客だけを相手にした歪なものだった。