『パンドラの果実』の「かもしれない」出来事 ディーン・フジオカが信じたい可能性とは

 原因は判明したが、土屋はまだ見つからない。小比類巻は、土屋が大切に持っていた絵を思い出し、家族との思い出の場所に向かったのではと推測する。「遺体に心があると思いたいんだろうけど」とあきれたような最上。「可能性を信じてもいいじゃないですか」と、小比類巻は土屋の意思を信じた。

 公園を捜索すると、ブランコに腰かける土屋の姿があった。そばにはスワンボート。娘が描いたあの風景だった。きっと人生で一番幸せだった思い出の場所で、再び鼓動を止めた土屋。「よくここまで……」、小比類巻が見つめた土屋の顔は、穏やかだった。

 死後、もう一度起き上がり、歩き出したのは人工タンパク質がもたらした偶然。けれど、すでに命尽きた身体で思い出の場所に向かい、辿り着いたのは、土屋の肉体に宿ったままの記憶と、強い意志によるものだったのかもしれない。すべては「かもしれない」出来事だ。今回の事件は、越えてはいけない一線とも、たちが悪い運命のいたずらともいえる。一方で、幸せだった時間にひととき戻るための、奇跡だったと捉える人もいるだろう。もちろん、それをファンタジーだと笑う人もいるはずだ。けれど、死んでしまった人間の真実は分からない。邪推も希望の押しつけも無配慮だ。土屋について、小比類巻と最上は最後に互いの持論を述べながらも、それをぶつけ合うことはせず、結論を導くこともしなかった(できなかったともいえる)。観る者も同じように、各々が抱いた思い、信じたい可能性を、自身が信じていればいいのだと思う。

 開いてしまったパンドラの箱を、見なかったかのように、ひととき押し込めたふうに思えた結末。しかし最上は、小比類巻の秘密を知る。彼が細胞記憶を信じたがった理由が分かったはずだ。もしも亜美がよみがえる日が来たら、愛娘に「星来」と名付けた、忘れたくないと言ったあの日を覚えているだろうか。

■放送・配信情報
日本テレビ×Hulu共同製作 新土曜ドラマ『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』
Season1:日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
Season2:Huluにて、6月配信
出演:ディーン・フジオカ、岸井ゆきの、佐藤隆太、西村和彦、本仮屋ユイカ、シャラ ラジマ、安藤政信、板尾創路、石野真子、ユースケ・サンタマリア
原作:中村啓『SCIS 科学犯罪捜査班 天才科学者・最上友紀子の挑戦』(光文社文庫)
脚本:福田哲平、関久代、土城温美
監督:羽住英一郎
主題歌:DEAN FUJIOKA「Apple」(A-Sketch)
チーフプロデューサー:三上絵里子、茶ノ前香
プロデューサー:能勢荘志、尾上貴洋、古屋厚、中村好佑
(c)日本テレビ
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