『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』本編映像公開 監督によるタイトル秘話も

 シアター・イメージフォーラムほかにて公開中の『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督 〈自己検閲〉版』の本編特別映像が公開された。

 ルーマニアの映画監督ラドゥ・ジューデ監督が手がけ、第71回ベルリン国際映画祭では金熊賞を受賞、第94回アカデミー賞では国際長編映画賞のルーマニア代表に選出された本作は、夫とのセックス動画の流出&拡散により、生徒の保護者たちへの「説明会」で吊し上げにあう不運な女性教師の物語。

 ジューデ監督曰く、もともとは「夢遊の人々(The Sleepwalkers)」というタイトル案もあったそう。様々なスタイルやいくつもの物語で構成されたオーストリアの作家ヘルマン・ブロッホの同名小説が由来で、3部構成からなる本作のインスピレーションのひとつとして浮上したが、あえなく断念。そして新たに付けられたのが『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』という大胆なタイトルだった。

 ジューデ監督は「安っぽいタイトルにしたかった。じつは、ルーマニア語のタイトル“Babardeala cu bucluc sau porno balamuc”には、英訳では表現できないくらいの本当にきわどい単語――ファックとかよりもっと下品なやつが使われている。センセーショナルな事件やゴシップ報道に力を入れる大衆紙の見出しに使われていそうな単語をあえて選んでいて、それこそが、ぼくが求めていたものなんだ。この作品のベルリン国際映画祭の出品が決まった時は、ニュースではタイトルを言わずに 『ラドゥ・ジューデ監督の新作』という紹介になっていたよ(笑)」と語る。

『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』抜き映像②

 公開された本編映像は、教師である主人公・エミが、事態の説明のため保護者たちが待つ学校へ赴く第3部のワンシーン。エミを標的に関係のあることないこと言いたい放題の保護者たち。そんな彼らの言い分を聞きながらも教師として、ひとりの人間として受け答えをしていたが、繰り返される暴言についに怒りが爆発する。ジューデ監督は「ぼくはセックスが卑猥だとは思わない。本当に焦点をあてているのは公の場で行われる議論の猥雑さ」とコメントしている。

 なお本作について、ベルリン国際映画祭の審査員らは、「いま、この瞬間の現代社会やその本質、心や体、価値観や生身の姿が切り取られ、スクリーンに描き出されている。もちろん、いまを生きるわたしたちの姿も……。心に訴え、論争を生むが、だれひとりとしてこの作品と安全な距離を保てる者はいないだろう」 とコメントした。

 今回の上映は、映画祭でプレミア上映されたバージョンとは異なる“監督〈自己検閲〉版”となっており、ジューデ監督が施した自己検閲シーンの場面写真もあわせて公開されている。

■公開情報
『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版』
シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開中
監督・脚本:ラドゥ・ジューデ
配給:JAIHO
2021/ルーマニア、ルクセンブルク、チェコ、クロアチア/ルーマニア語/106分/シネスコ/5.1ch/英題:Bad Luck Banging or Loony Porn/字幕翻訳:大城哲郎/R-15
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公式サイト:unluckysex-movie.com

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