ファーストサマーウイカはいつから"俳優"だったのか 劇団時代から培ってきた才能が開花
そして2021年、NHK連続テレビ小説『おちょやん』に、ハリウッド帰りの女優・ミカ本田役として出演。主人公がNGを連発すれば、「私もう待ち疲れたんだけど」とキツい雰囲気を出したかと思えば、感動的な演技に「よくやったわね」と言わんばかりの訳知り顔で笑みを浮かべるなど、幅広い表情を見せた。この大物女優になりきったような演劇チックな演技が面白く、コメディリリーフとしてドラマを盛り上げた。そうした面白キャラだけでなく、同年の『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系)では、元ヤンキーで姉御肌の喫茶店の店主役で、ヒロインたちを優しく見守る温かい演技を披露。2022年の『家出娘』(NHK総合)では、母を亡くした姪に寄り添う叔母を演じた。同作はドキュメンタリータッチのドラマで、ウイカはあらゆるものを削ぎ落とし、静かに姪の変化を見守るような演技を披露し、役者としての懐の深さを見せた。中学生の時に片桐はいりのような脇役者になりたいと書いていたが、片桐のような個性的な存在感だけでなく、どこか余裕を感じる優しさとユーモアで主役の演技を引き上げるウイカ。そういった本質的な部分では、片桐の存在感に近づいているように感じる。
そして現在放送中の『私のエレガンス』は、トラックドライバーの仕事を務める元レディース総長のシングルマザー役で、娘の通う小学校がセレブ校であることから一念発起し、彼女がエレガンスな女性に変身するまでを描くラブコメディ。元ヤンの素顔と、エレガンスさを一生懸命装う二面性を演じるのはウイカの得意とするところである。この役の良さは、周りの人間が素顔の彼女の良さに気づいていくほど、人情味溢れるキャラクターであることだ。それこそ片桐が昨年連ドラ初主演を務めた『東京放置食堂』(テレビ東京系)のような、流されない信念と凛とした格好良さといった、名脇役が主役を演じた時に生まれる安心感が伝わる。また、自らがドラマのエンディング主題歌を歌うというのも、これまで培ってきたウイカの集大成のようにも感じる。
『アナザースカイ』で、ウイカが“遅咲き”と世間から言われることに対し、BiSのプロデューサー兼マネージャーだった渡辺淳之介が放った「この齢になってからじゃない、(BiSを)一緒にやってた時と変わってないから、ウザいじゃん。熟したのよ。遅咲きじゃない、完熟よ」という言葉がまさに言い得て妙である。劇団時代、アイドル時代から変わらずにやっていたことが完熟し、今の味のある役者としてのポジションに流れ着いたように思える。ただそれは、自分の好きなことを突き詰めて行った結果なのかもしれない。
■放送情報
土曜ドラマ9『私のエレガンス』<4K制作>
BSテレ東/BSテレ東4Kにて、毎週土曜21:00~21:55放送(全6話)
出演:ファーストサマーウイカ、草刈民代、吉沢悠ほか
脚本:本山久美子、大谷洋介
監督:松本佳奈、西海謙一郎
音楽:遠藤浩二
主題歌:ファーストサマーウイカ 「Open the Door」(ユニバーサルミュージック/Virgin Music)
プロデューサー:濱谷晃一(テレビ東京)、田中智子(テレビ東京)、永井宏明(unit)、向井達矢(ラインバック)
制作:BSテレ東、unit
制作協力:ラインバック
製作著作:「私のエレガンス」製作委員会2022
(c)「私のエレガンス」製作委員会2022
公式サイト:https://www.bs-tvtokyo.co.jp/atai_elegance/
公式Twitter:https://twitter.com/BS7ch_Elegance
公式Instagram:https://www.instagram.com/atai_elegance/