歴代映画との繋がりも彷彿とさせる? 黒沢清、犬童一心、瀬々敬久が手がけたドラマ6選

 WOWOWには、映画監督が手がけた傑作ドラマが数多く存在する。

 例えば、『CURE』や『スパイの妻<劇場版>』などの映画で知られる黒沢清が監督した『連続ドラマW 贖罪』。本作は湊かなえの同名小説を映像化したサスペンスドラマだ。物語は全5話となっており、娘のエミリ(木村葉月)を何者かに殺害された母親・足立麻子(小泉今日子)と、エミリと同級生だった4人の女性の物語が視点を変えて語られていく。蒼井優、小池栄子、安藤サクラ、池脇千鶴が各話の主人公を務め、最後に小泉今日子が演じる麻子の物語で事件の真相が明らかになるのだが、謎解き以上に強調されているのが、女たちの抱える罪悪感だ。犯人の顔を思い出せない4人は麻子から脅迫され、大人になっても事件のことを引きずっている。そんな女たちの不安が、黒沢清が得意とする不穏な演出でじわじわと描かれる。

『連続ドラマW 贖罪』

 中島哲也が監督した映画『告白』を筆頭に、湊かなえの小説は多くの監督によって映画化、ドラマ化されているが、監督によって作品の印象はガラリと変わる。この『贖罪』は、黒沢清が得意とするホラーテイストが物語全体を支配しており、湊かなえ作品であると同時に、黒沢清の映画の特徴である“不穏な手触り”が刻印されている。

 他にも黒沢清は、映画『散歩する侵略者』のスピンオフドラマ『予兆 散歩する侵略者』をWOWOWで手がけている。日常が何者かによってじわじわと侵略され、家族や過去といった“概念”を奪われた人々が変質していく恐怖を描いた本作は、黒沢清の映画『回路』を彷彿とさせる哲学的恐怖を描いたドラマだ。こちらも必見である。

 次に紹介したいのが、犬童一心監督が手がけた『連続ドラマW グーグーだって猫である』(以下、『グーグー』)だ。本作は少女漫画家の大島弓子が描いたエッセイ漫画をドラマ化したもので、第2シリーズも作られている。少女漫画家・小島麻子(宮沢りえ)は、長年連れ添った愛猫のサバを亡くした後、ある出来事をきっかけに子猫のグーグーを飼うことになる。劇中では、麻子の淡々とした日常が、穏やかなトーンで描かれており、少しだけファンタジックな空気が描かれている。何より劇中に登場する猫がかわいくて画面を見ているだけで癒やされる。

『連続ドラマW グーグーだって猫である』

 犬童一心は『赤すいか黄すいか』『金髪の草原』といった大島弓子の短編漫画を映画化しており、『グーグー』もドラマ化以前に小泉今日子主演で映画化している。また、『のぼうの城』(樋口真嗣と共同監督)、『引っ越し大名!』といった時代劇映画や松本清張のミステリー小説を映画化した『ゼロの焦点』のような大作映画も多数手がけている犬童だが、やはり彼の持ち味が強く発揮されるのは、『グーグー』のような日常に根ざした少女漫画的作品だろう。かわいい絵柄の奥に哲学的なテーマや人生の苦味が隠されている大島弓子作品と犬童の世界観の相性はバッチリだ。『グーグー』もふわふわとした楽しい世界を描いているように見えるが、なかなか一筋縄ではいかない作品となっている。

 もう一作、犬童作品でオススメなのが、綿矢りさの小説をドラマ化した『連続ドラマW 夢を与える』。子役時代から活躍する国民的アイドル・阿部夕子(小松菜奈)のある動画がネット上に流出して世間を賑わせている場面から、ドラマははじまる。その後、物語は夕子の幼少期へと遡っていき、夕子を取り巻く芸能人の世界やマネージャーで母親の幹子(菊地凛子)との共依存的な母子密着関係が順を追って描かれていく。夕子を取り巻く芸能界の描き方は生々しく、メディアに翻弄され消費されていく夕子の内面が、残酷なタッチで描かれている。ヒリヒリとする映像で撮られた転落劇から最後まで目が離せないこと間違いなしだ。

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