うんざりした感情から解き放たれたいと願う兄妹の日常 『私の解放日誌』が描く3人の葛藤
日頃、生きていてうんざりしてしまうようなことはないだろうか。満員電車に揺られ、会社での人間関係や上司からの指摘に悩む日々から離れたくて、映画やドラマを観る人も多いはずだ。Netflixにて、4月から毎週配信中の韓国ドラマ『私の解放日誌』。このドラマは、そんな誰もが一度は感じたことがあるだろう「うんざり」した感情から解き放たれたいと願う兄妹を描くヒューマンドラマである。
韓国・京畿道の町に住んでいるヨム3兄妹の日常と、その日常から逃げ出してしまいたいという彼らの葛藤を描いている。3人とも都心で働き、夜には田舎の実家に帰ってくる毎日。彼らが住んでいるとされる「サンポ市」は架空の町なのだが、どこに住んでいるのかを聞かれ、水原市と近いと答えていることから、ソウルからは約1〜2時間かかる場所に住んでいるとされる。そのため終電が早く、電車が無くなれば兄妹でメッセージを送り合い、慣れた手つきでタクシーに相乗りしてしっかり割り勘し、帰宅をする。しかし、その間会話はなく、兄妹といえど親しい関係には見えない。
口数は少ないながらも、田舎の幼なじみも集まって酒を飲む習慣はあるようだ。会話の中で、「ニューヨークとまでは言わないがソウルで生まれたかった」と言っており、彼らはどうみても、自分が田舎育ちであることに劣等感を抱いている。
長男のチャンヒ(イ・ミンギ)は耐えられないほどダサいという理由で彼女に振られ、長女のギジョン(イ・エル)は地元の美容院で失敗された髪型に文句を言っていた。一方、次女のミジョン(キム・ジウォン)は休日も両親の畑仕事を手伝い、平日も家事をするなど献身的に見えるが、表情は変わらず、文句を言うことはないがあまり笑うこともない。「都会に住んでたらお前なんかとつるんでない」「同級生が数人しかいなくてしかたなく相手にしてる」とチャンヒは幼なじみに言った。
それでも不思議なことに、彼らは田舎を離れようとしていない。したのかもしれないが、まだ描かれていない。両親の仕事を積極的に手伝うでもなく、文句ばかり言っているのになぜ好きでもない田舎に住んでいるのか。彼らの人生が思うようにうまくいかないのは、田舎に生まれ育ったからだと思い込みたいからではないだろうか。田舎を離れてしまえば、うまくいかない理由は自分自身でしかなくなる。それを認めたくないのだろう。
「ソウルに生まれてたら、何か違ってた?」とミジョンは言った。誰だって、全て環境のせいにして、現実に向き合いたくないと思うことはあるだろう。そんな人たちへ向けての、メッセージも込められているドラマだ。