『神様のえこひいき』が辿り着いた少女漫画実写作品の最適解 高校生の無限に広がる自由
オンライン動画配信サービスHuluと集英社の「マーガレット」がタッグを組んだ『マーガレット Love Stories』の作品は、2010年代に映画館のスクリーンで一世を風靡して以降すっかり低空飛行を続けている少女漫画の実写化界隈に新たな活路を見出してくれる。いやむしろ、それはこのジャンルがようやく辿り着いた最適解であるといってもいいかもしれない。
昨年配信された第1弾の『マイルノビッチ』では、冴えない女子高生が大変身を遂げるという『マイ・フェア・レディ』あるいは『シーズ・オール・ザット』さながらの典型的なシンデレラストーリーが描かれた。つづく第2弾の『悪魔とラブソング』では周囲から孤立している女子高生が転校先の学校で同級生たちと心を通わせていく様が音楽を軸にして描かれ、そして第3弾となる『神様のえこひいき』では“転生”と“入れ替わり”というクラシックな要素をフックに、主体的にも客体的にも文字通り性別を超越した四角関係が描かれていく。
原作コミックがある程度の長さであればあるほど、映画の尺に脚色されるときには駆け足に、メインカップルの恋愛成就というシンプルなゴールラインにフォーカスを当てざるを得ない。対して連続ドラマのゆったりした尺になれば、主人公と周囲の登場人物の心理を的確に描写することが可能になり、それぞれのキャラクターに良き帰結点が設けられることで学園ドラマに必要な群像性が生まれる。もっともこの種の作品群のメインターゲットである10代の視聴者にとってフレキシブルな配信サービスが非常に身近なものとなったことを踏まえれば、“最後の砦”と呼ぶような追いやられた結果ではないとわかるだろう。
何よりもそれを証明しているのは、こうして作られた作品のクオリティの高さに他ならない。今回の『神様のえこひいき』は、幼なじみである七原ケンタ(窪塚愛流)にいつの間にか好意を抱いていた天野弥白(藤原大祐)が、自分の気持ちがブレないものであることを証明するために“御百度参り”をするところか始まる。その姿が神社の神様(古川雄輝)の目に留まるのだが、告白に失敗した弥白はトラックにはねられてしまう。気が付いた弥白の前に現れた神様は、“えこひいき”として一つだけ願いを叶えてもらえることになる。そこで彼は、ケンタ好みの女子になりたいと願い、天堂神楽(桜田ひより)という別の人物になって新たな人生を送ることになるのである。