大泉洋を中心に“人間の怖さ”を体現する役者たち 『鎌倉殿の13人』に釘付けになる理由

 しかし、大泉演じる頼朝に限らないのだが、戦乱の世を生きる登場人物たちは、普段は人間らしいところがコミカルに描かれていても、ある瞬間には、どこか残酷で、やはり空恐ろしいところが垣間見える。

 菅田将暉演じる源義経もそんな空恐ろしい一人で、第8話では、ウサギをめぐって野武士とどちらが遠くに矢を放てるかの競争をするも、野武士に矢を向け、平然と殺してしまう姿が描かれた。同じ時期に放送中の『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)の暴力性のないおだやかな久能整とは正反対の、危うくらんらんと目を光らせる菅田将暉の表情にくぎ付けになってしまう。

 第10話では、頼朝は侍女頭の亀とも関係を続けており、亀が八重にわざと自分と頼朝の関係を知らしめるシーンも残酷であった。この関係に政子が黙っているわけはない。第12話では、有名な「亀の前事件」が描かれるということで、政子の恐ろしさが、今後も加速していくのだろう。

 三谷幸喜の書く、ふとした残酷さや恐ろしさ、人間臭さを大泉洋をはじめとした俳優たちが、さりげなさやコミカルさと絶妙のバランスで見せてくれることが、このドラマを次も観たいと思わせる魅力のひとつになっていると感じる。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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