松村北斗、演出も興奮の『カムカム』再登場の裏側 「物語を積み重ねてきたからこそ」

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第97話で、稔(松村北斗)が再登場した。

 30年ぶりに帰郷した岡山で、るい(深津絵里)の目の前に戦死したはずの父・稔が現れる。日付は終戦記念日である8月15日。安子(上白石萌音)と稔が思いを通じ合わせた、そして訃報を聞き安子が無我夢中でたどり着いた朝丘神社にて、娘のるいは父の姿を初めて目の当たりにする。

 稔が登場したのは、安子が想像する“手に入れることのできなかった家庭の姿”の中で、まだ幼いるいと一緒にラジオ体操をしていた第24話以来。脚本を手掛ける藤本有紀との間で「どこかでもう一回という話はあった」と語る演出の安達もじりでも、稔が再登場する台本に興奮を隠せなかったようだ。

 祖先の霊を祀るお盆の時期は、霊がこの世に戻ってくると言い伝えられている。雉真家に残されていた英語辞書が稔をるいの元に引き合わせた。稔がるいに伝えた「どこの国とも自由に行き来できる。どこの国の音楽でも自由に聴ける。自由に演奏できる。るい、お前はそんな世界を生きとるよ」について、演出の安達は、「これだけの時間をかけて昭和の時代を描くことの一つの意味だと思います。先代のみなさんの戦争の体験を伝え続けるーーここまで物語を積み重ねてきたからこその感覚はありました」とセリフに込められた思いを話す。

 若くして戦死している稔の年齢を娘のるいはとうに追い越しており、実際に演じる松村北斗と深津絵里の年齢も父と娘であべこべだ。「いろんなことが錯綜していて、みんな照れながらやっていました。不思議な感じでしたね」と安達は撮影を振り返る。松村は一度クランクアップしながらも、もう一度役に入るといった特異な撮影の仕方となった。松村本人は期間が空いての役に心配をしていたようだが、軍服を着た瞬間に稔になりきる松村に安達は「完璧です」と一言。さらに演出として「あなたが一緒にいたかった、育てたかった娘の幸せを願って話しかけてください」と声をかけたという。

 安達は俳優・松村北斗の魅力についてこう語る。

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