『カムカム』は間違いなく濱田岳の代表作に “お兄ちゃん”として迎えた算太の最期

 喜劇とも悲劇とも言い難い人生を表現するかのように踊った後、算太(濱田岳)が力尽きて倒れた。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第95話。クリスマスの日、るい(深津絵里)のサンタクロースになった算太はその生涯を終える。

 るいやその家族だけではなく、昔からよく知る清子(松原智恵子)と吉右衛門(堀部圭亮)に囲まれて穏やかな最期を迎えた算太。きっと自分がもう長くないことを知り、やり残したことを終わらせにきたのだろう。

 安子(上白石萌音)からるいが受け継いだ「たちばな」のあんこで作った回転焼きを食べたり、残り少ない時間を家族に囲まれて過ごしたり、一つは自分のためだったかもしれない。でも、もう一つはるいにプレゼントを渡すためだ。算太はるいに2通の通帳とこの言葉を遺す。

「わしが悪いんじゃ。すべてわしが」

 錠一郎(オダギリジョー)からの提案で翌年の夏、るいは算太の遺骨とひなた(川栄李奈)や桃太郎(青木柚)を連れて、ついに母親との思い出が詰まった岡山に帰省。そこで30年以上ぶりに勇(目黒祐樹/村上虹郎)や雪衣(多岐川裕美/岡田結実)と再会を果たした。

 るいの父方の家が実業団野球で有名になった雉真繊維であることを知り、興奮を隠せない桃太郎。その時、屋敷の中から「よう帰ってきたの」と急ぎ足で勇が出てくる。ちょうどその頃、テレビでは夏の甲子園が放送中。挨拶もそこそこにるいたちを家に招き入れ、勇は野球の中継に夢中だ。初めて安子が雉真の家におはぎの配達にきた時、稔(松村北斗)を呼びに出てきた青年時代の勇を思い出す。しかも、相変わらず「るいのは野球の“塁”」と名前の由来を勘違いしているようで、昔となんら変わっていない。でも久しぶりにるいと顔を合わせた時のホッとしたような勇の表情からは、ずっと彼がるいのことを案じていたことが分かった。

 それは雪衣も一緒だ。心から振り絞るような「おかえり」に雪衣の後悔が詰まっている。算太が一途に自分のことを思っていてくれたにもかかわらず、勇への恋心を捨てられずに傷つけてしまったこと、それで算太は「たちばな」再建のための通帳を持ったまま失踪したこと……。算太の遺骨に対面した雪衣の口から次々とるいの知らない真実が出てくる。

 あの時、誰もが“ひなたの道”を探そうと必死にもがいていた。稔の代わりに安子を守ろうとした勇も、そんな勇を思い続けていた雪衣も、父親と同じようにお菓子で人を幸せにし、自分も家庭を築こうとしていた算太も。しかし、それが幼いるいと安子を引き離す結果になってしまったことを誰もが後悔していたのだ。

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