『妻、小学生になる。』は“生まれ変わり”ではなかった 石田ゆり子が語りかけていた願い

「借りたものは、いつか返さなきゃいけない。本当の持ち主に」

※以降、ネタバレあり。

 最愛の妻が小学生の姿になって帰ってきた――。だが、それは“生まれ変わり”ではなく、短期的な憑依にすぎなかった。その体は、貴恵(石田ゆり子)の魂を受け入れるために生まれたものではなく、万理華(毎田暖乃)が人生を全うするためのもの。万理華のこの世に対する絶望と、貴恵のこの世に対する未練がたまたま一致したことで起きた奇跡、あるいはプログラムの誤作動とも呼べる出来事だった。

 金曜ドラマ『妻、小学生になる。』(TBS系)第8話では、ついに貴恵と万理華の間で何が起こったのかが明かされた。貴恵にとっても、それはショックだったに違いない。自分が命を落としたことにより、ゾンビのようになってしまった夫・圭介(堤真一)と娘・麻衣(蒔田彩珠)に「しっかりしなさい」「元気を出して」と言いたかっただけだったのに。自分のその願いのために、万理華の体を、時間を、人生を奪っていることになっていただなんて。

 愛情深く責任感の強い貴恵のこと、そんな事実を知ってしまったからには、万理華にすぐにでも体を返さなくてはと覚悟を決める。大晦日に万理華の意識が戻ったのも、万理華が自分の人生を生きたいと思ってのこと。そして圭介も、麻衣も、そして弟の友利(神木隆之介)も、願い通り「しっかりしなさい」と一喝し、前向きに歩み出したところだ。今ならば、きっと大丈夫だ……と。

 ところが、麻衣は「やだやだ」と駄々をこね、友利に至っては「元のゾンビに戻ってしまう」と訴える。さらに、頼れる夫と見直しつつあった圭介も、貴恵と万理華が共存する方法を「絶対に見つけるから」と諦めようとはしない。彼らの時計は動き出したように見えたが、それは彼ら自身の力ではなく貴恵がネジを巻いて動かしただけだったのだろうか。

 たしかに、一度失った大切な人が戻ってきたのであれば、その手を二度と手放したくないと思ってしまう気持ちもわかる。夢にまで見た幸せが、再び手のひらからこぼれ落ちてしまうなんて、あの身を裂かれるような別れを再び経験しなければならないなんて……圭介たちの心情を思えば辛すぎる現実である。

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