『湯あがりスケッチ』小川紗良×新谷ゆづみの心の交流がまぶしい 朝風呂の持つ偉大な力も
平和なタカラ湯に事件が起こる。一人娘のゆづ葉(新谷ゆづみ)が帰ってこなかったのだ。この一件で愛之助(村上淳)は大パニック。穂波(小川紗良)と熊谷(森崎ウィン)がゆづ葉を探しに街に出るのであった。
どんなに大切な家であっても、ふと帰りたくない日はおとずれるもの。相手を強く思いやるゆづ葉だからこその繊細な心の揺らぎが湯けむりと重なる。ひかりTVのオリジナルドラマ『湯あがりスケッチ』の第6話では、“朝風呂”を堪能するゆづ葉と穂波の心の交流が描かれた。
穂波にとっても熊谷にとってもかけがえのない大切な居場所であるタカラ湯は、娘のゆづ葉にとっての家でもある。この日のゆづ葉は、父親に恋人を紹介することの難しさに直面し、ついつい家から足が遠のいてしまった。その結果として、ゆづ葉は穂波の家を訪れる。ふたりはぽつり、ぽつりと心の内をさらけ出し、次第により深いところまで理解し合うように。朝風呂に浸かりながら、少しずつゆづ葉の心が整理され、人に話せるところまで回復していく様子からは、銭湯の持つチカラを感じずにはいられない。私たちは日々、家の浴槽の中で気持ちを回復し、思考を整理し、また次の一歩を歩む活力を養っているものだ。加えてそれが銭湯の広い浴槽ともなれば尚更だろう。
そんな銭湯のチカラに「朝」の清々しさが加わるのが第6話だ。私たちは普段、1日の汚れを落とし、疲れを癒すよう、夜に風呂に入ることが多いだろう。『湯あがりスケッチ』でも夜のシーンが数多く映されてきた。しかし今回は一転、熊谷が穂波を「朝のお風呂みたいな人」と形容したことになぞり、早朝にフォーカスされる。
朝は始まりの象徴であり、そこから連想されるのは煌めく朝日と希望に満ちた清々しい空気だ。そんな透き通るような空気を目一杯体に取り込むように、穂波とゆづ葉は朝のランニングをする。そして朝風呂で、陽光の中に立ち上る柔らかな湯けむりに包まれながら、ゆづ葉は自らの心を解放するのだった。朝風呂の中、穂波と話したことでゆづ葉は再び家に帰れるようになる。ゆづ葉の吐露した悩みが直接解決されたわけではないが、「そんなつもりはないのに傷つけてしまったかも」という心のしこりは軽くなり、父親への懸念も溶けていったように見受けられる。「前にすすめるかもしれない」という希望、それを持たせてくれることこそが朝風呂の持つ偉大な力なのだろう。