『となりのチカラ』『カムカム』でネクストブレイク候補に? 子役・古川凛の繊細な演技

 松嶋菜々子や国仲涼子、石原さとみらを輩出し、「若手女優の登竜門」と呼ばれてきたNHK連続テレビ小説こと朝ドラ。しかし、近年は『スカーレット』(NHK総合)の戸田恵梨香や『おかえりモネ』(NHK総合)の清原果耶など、すでに数々の作品に出演し、演技力に定評のある女優がヒロインに抜擢されるケースが多い。その代わりにネクストブレイク候補として注目されているのが、ヒロインの脇を固める俳優や、ヒロインの幼少期を演じる子役たちだ。

 最近の例を挙げれば、『おかえりモネ』で主人公・百音の妹役を演じた蒔田彩珠や先輩社員を演じた森田望智が話題を呼び、『妻、小学生になる。』(TBS系)で共演。同作は10年前に愛する妻・貴恵(石田ゆり子)を亡くし、生きる意味を見失っていた夫・新島圭介(堤真一)と娘・麻衣(蒔田彩珠)の前に、貴恵の“生まれ変わり”を名乗る小学生の女の子・白石万理華が現れるというストーリーだが、その万理華を演じているのは『おちょやん』(NHK総合)に出演した毎田暖乃だ。家計のためにわずか9歳で奉公に出される波乱万丈なヒロイン・千代(杉咲花)の幼少期を演じた毎田の高い演技力は、「妻が小学生になったら」というトンデモ展開をも可能にした。他にも大人びた表情や演技でドラマや映画に引っ張りだこの白鳥玉季(ヒロイン役ではないが『エール』(NHK総合)に出演)など、子供の豊かな感受性を繊細に表現する名子役の存在は作品に幅を持たせる。

 3人のヒロインがバトンを繋ぐ現在放送中の『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)にもたくさんの子役が出演してきた。その中でも特に深い爪痕を残したのが、深津絵里演じるるいの幼少期を演じた古川凛だ。彼女が登場したのは話数にしてわずか6回だが、その後の人生を大きく変えることになった濃密な出来事に翻弄される7歳のるいを熱演した。最初は地元の名家で何不自由なく育った天真爛漫な女の子。母の安子(上白石萌音)のそばでいつも笑顔を浮かべるるいはこの上なく幸せそうに見えた。

 しかし、裏では大人たちの世界が少しずつ動き始め、るいの「お母さんとずっと一緒にいたい」という純粋な願いが置いてけぼりになってしまう。その微妙な変化を察し、徐々に暗い影を落としていくるいの表情が印象的だった。小さな頭で色んなことを考えた結果、自分は母親に捨てられたという結論を出してしまったるい。ついには「I hate you」という言葉で安子を拒絶してしまうのだが、本作のドラマガイドで安子を演じた上白石萌音は「本番では、るいのまなざし、しぐさ、声、額の傷、すべてが刺さりました」と撮影を振り返っている。それがとどめになってしまうほど冷たい一言だったが、第三者から見れば、心から安子を拒絶したわけではなく、愛情を確かめるために発したことが分かる複雑で繊細な演技に心を打たれた。

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