『ドクターホワイト』石坂浩二の渾身の演技に涙 浜辺美波演じる白夜に伝えた“命“の意味

 「最後のピース」と言って勇気(毎熊克哉)が差し出した紙片。そこに書かれていたのは希少血液「RH null」の文字だった。白夜(浜辺美波)を救うため、将貴(柄本佑)はRH null保有者について調べ始める。

 『ドクターホワイト』(カンテレ・フジテレビ系)第8話では、将貴や白夜を見守ってきた高森院長(石坂浩二)との別れが描かれた。末期がんの高森のため、有効な治療法を検討するCDTチーム。そこに産婦人科医の東堂絵馬(華優希)が飛び込んでくる。「赤ちゃんが消えたんです」。聞けば、子宮内にいた赤ん坊がどこにも見当たらないのだという。エコーと検査薬でサインが出たのに、自然流産あるいは子宮外妊娠の可能性もあり、それにもかかわらず血中hCG濃度は保たれたまま。相反する徴候を説明できるのは腫瘍の存在で、驚くべきことに卵巣妊娠と卵巣がんが同時に起きていることがわかった。産みたいという患者の希望を容れて、がん摘出と胎児の子宮への移植を同時に行おうとする。そのためには産婦人科の手腕を兼ね備えた優秀な外科医が必要で、高森総合病院にはそれができる医師がいた。外科部長の真壁(小手伸也)である。

 「君に手術を頼みたくてね」。病床に横たわる高森が頼んだのは、自らのがん切除ではなく、子宮外妊娠のがん患者の手術だった。院内で対立し、冷え切った関係と思われた高森と真壁の対話は、命を救おうとする熱意が火花を散らす迫真のシーンとなった。最後の言葉を聞くために高森の下に集まったCDTの医師たち。高森が白夜の手を握って「生きるんだ。生きて命をつなぐんだ」と伝えたのが最後の言葉になった。

 原作で高森の死はもっとずっと前だが、ドラマ版では原作をアレンジし、高森の死を先に伸ばして2つのエピソードをつなげることで、老医師の最期をドラマチックに演出した。石坂浩二の渾身の演技に思わず引き込まれたが、共演陣もここ一番の熱量で応じており、落涙必死の名場面だった。自分より若い役者に囲まれながらも、後輩たちのポテンシャルを引き出す芝居をさりげなくやってのけるところが、レジェンドたるゆえんだろう。若い世代にバトンをつなぐという点で、本作の石坂のような存在には単なる役柄以上の意味があり、その事実を臨場感をもって示したのが本作だった。

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