心は逃げなかった成田凌と笑顔の森七菜 『逃亡医F』最終話に散りばめられた切なさと代償

 スピーディな展開と、やや非現実的なストーリーに当初こそ驚いたが、回を追うごとに人間の核の部分に触れていった本作に、気付かされることが多々あった。『逃亡医F』(日本テレビ系)最終話に散りばめられたいくつかの切なさと代償は、やけにリアルで、やはり人間的だった。

※以下、ネタバレあり

 長谷川(桐山照史)が、留置所で命を落とした。こうなることを分かっていたのか、妻には書き置きを、藤木(成田凌)には、佐々木(安田顕)を追い込むための証拠を残して。長谷川は自身を「弱くてずるい」と繰り返す。確かに彼は罪を犯したが、きっかけは愛する妻を救うため。失うことが怖くて名前も呼べずにいた、愛する我が子に出会うため。「ほんのちょっとだけ正しかった」と、最期まで罪の意識に苛まれた長谷川の勇気は、藤木のもとへと確かに届けられた。

 そして妙子(桜庭ななみ)が目を覚ました。「汚い部屋」呼ばわりに反応する筋川(和田聰宏)と拓郎(松岡昌宏)をつきとばし、妙子のもとへ一目散の藤木。感動のシーンさえクスっと泣き笑いに変えてしまう本作の空気感を、全10話を通してすっかり愛してしまった。

 妙子の口から、これまでの出来事が語られた。藤木は、助けられた多くの人に真実を、無実であったことを伝えたいと言う。ここに来るまで、たくさんの出会いと別れがあった。どうすれば信じてもらえるのか分からず、心通わせても別れなければならない逃亡生活。思えば、一番最初に信じてくれたのは美香子(森七菜)だった。そろそろ元の生活に戻らなければと切り出す美香子に、「いつのまにか、一緒にいるのが当たり前のように思っていた」と藤木。その言葉に他意がないからこそ、美香子の心中を思えば複雑だ。

 妙子の意識が戻ったということは、ガイストと「DDSη」の組み合わせは正しかったということの証明でもある。指名手配犯となり逃亡していた佐々木は、藤木を呼び出し、「出頭するから、私に有利な証言をしろ」と言う。「今も世界には、ガイストを待つ患者が多くいる」と、「数百万の命」を人質にして。

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