なにわ男子 長尾謙杜の鮮烈な芝居 『となりのチカラ』『HOMESTAY』で難役を次々と好演

 また、長尾と言えばなんと言っても、映画初出演にして初主演を飾っている現在配信中のAmazon初制作オリジナル邦画『HOMESTAY』での好演ぶり、鮮烈なお芝居にも面食らわされる。

 森絵都の小説『カラフル』を実写映画化した本作は、高校生・小林真の身体に突然乗り移った魂・シロが、100日間という期限の中で真の“死の真相”を探っていく青春物語。

 筆者も原作小説の大ファンだが、まずこの突拍子もない設定ゆえ、長尾には元々の真と、正体不明のシロの魂が入った後の真の演じ分けが求められる。真とシロでは髪の長さに違いがあるとは言え、内向的な真と、快活なシロという対極にいながら姿形は同じという難しい役どころを一人二役で見事やってのけた。声の出し方、他人への眼差し、目配せ、目の輝き、歩き姿に立ち姿、声かけ一つとっても、シロには日照りのようなカラっとした様が随所に感じられる。

 対して、真にはどこかじっとりとした雨雲のような空気感が付き纏う。そして何より、真としてのホームステイ期間が長くなればなるほど、真相に近づけば近づくほどに、シロから真への、またその周囲への距離の取り方が徐々に変わっていくのも見ものだ。どんどん2人の境界線が曖昧になりリンクしていく様は見事なグラデーションをなし、引き込まれる。シロが真に語りかけるシーンは、それこそ心友に語りかけているかのようで彼らの距離感の変化が如実に現れていたし、それが彼らの“成長”の証とも言えるだろう。

 シロが限りなく真の状態で、土砂降りの雨の中、石田ひかり演じる母親と真っ向から対峙する様には目を見張るものがあった。その時に彼の口から溢れ出た言葉一つ一つが重く鋭く、そして痛かった。シロが最後に真相に辿り着いた瞬間には、なんだか役同様にさらに確実に成長した長尾自身に出会えて、輪をかけて感動させられること間違いなしだ。

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