『ファイトソング』凛役で魅力放つ藤原さくら シンガーソングライターならではの表現力

 火曜ドラマ『ファイトソング』(TBS系)に萩原凛役で出演中の藤原さくらが魅力を放っている。凜はヒロイン・花枝(清原果耶)を優しく見守る頼もしい存在でありながら、自身も慎吾(菊池風磨)への打ち明けられない“恋”に複雑な気持ちを抱える役どころだ。独特の低音ボイスで交わす、幼なじみの慎吾との軽快なやりとりは視聴者の心を掴む。シンガーソングライターとして活躍する傍ら、女優としてのキャリアも積み上げつつある藤原は、本作でますますマルチな才能を知らしめただろう。

 藤原は、2016年に月9ドラマ『ラヴソング』(フジテレビ系)でヒロイン・佐野さくら役のオーディションに挑戦。シンガーソングライターとしての強みを活かして見事合格し、ここから音楽だけでなく芝居へと表現の場を広げていった。劇中では主演の福山雅治が作詞・作曲を手掛けた楽曲「Soup」「好きよ 好きよ 好きよ」の歌唱も披露するなど、存在感を見せる。加えてヒロインは吃音のある役であったことから、藤原は吃音をテーマにした小説、漫画や映画などの作品を通して学んだり、実際に吃音に悩む方たちから話をきき理解を深めてから役に臨むなど、努力家であることも明かされている。

 その後、約3年半ぶりのドラマ出演となった『DIVE!!』(2021年/テレビ東京系)の西川恭子役では津軽弁を披露。演技の場数が決して多くはない中、方言を使う難しい芝居にも積極的に挑戦していることがうかがえた。持ち前の耳の良さ、音への勘の良さが光り、こうした芝居においても表現力を発揮できているのだろう。

 さらに、藤原の芝居で特筆したいのは「声」だ。『ファイトソング』での凛役は、特にその低音ボイスが心地よく響く。シンガーとしてもその深みのある低音は注目されており、ブルージー、スモーキーなどと称されてきた。その声質は芝居でも魅力的な個性として光り、凜役での突き放したような台詞や話し方の中にもどこか暖かさや、相手を愛しむ気持ちが込められていることがよく伝わってくる。音楽を続けているだけに、感情を声に乗せて他者に伝えていくスキルに長けているのだろう。藤原にとっての台詞とは、メロディがないだけで歌のように強い表現力を持って届けることのできるツールのひとつなのかもしれない。それほどに彼女の声は強い説得力を持っているのだ。

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