『平家物語』と『鎌倉殿の13人』で学ぶ平安時代 対比で浮かび上がる“盛者必衰”

ポップな『鎌倉殿の13人』の勢い

 頼朝(大泉洋)をかくまったことで、時代の流れの渦に巻き込まれていく北条義時。この時代の主人公と言えば、頼朝か義経だろう、と思わずにはいられないものだが、義時のポジションというのは絶妙で当時の混乱ぶり、というかカオスがよく伝わってくる。渦中にいながらも、視点は少し『平家物語』のびわと近いのかもしれない。

 言葉遣いもほぼ現代のものでわかりやすい。例えば、第1話で男女の交際を「付き合っている」と表現していたときは、わかりやすすぎて逆に戸惑ってしまうほどだった。『平家物語』で理解がしづらいという場合は、『鎌倉殿の13人』が補完してくれるというとらえ方もいいかもしれない。

 そして『平家物語』の根底にあるのがもの悲しさだとしたら、鎌倉殿は勢いと陽気さだ。もちろん時代的に陽気なものではないし、理不尽な死もある。それでも陽気さが感じられるのは、これから平家を討つ、ということを観る側が知っているからかもしれない。

 それにしても、個人的な主観であるが、頼朝のキャラクターは新感覚でいて、この人物にびわが大切に思っている人たちは苦しめられるのか……と思うとやるせない気持ちになる。

栄華は長くは続かない

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」

 平安時代に詳しくなくても、『平家物語』の冒頭一説を知っている人は多いはず。学生のときに授業で覚えさせられ、大人になっても頭に残っている……なんて人もいるだろう。

 勢いの盛んな者もいつかは必ず衰える。なぜ『平家物語』でこの言葉が生まれたのか。『平家物語』の平清盛を観ているとよくわかる。衰える者は、こういう者なのだと。ある意味、平清盛はその後の盛者たちの反面教師となっているのかもしれない。

 一方、『鎌倉殿の13人』の頼朝を見ていると、時代をひっくり返すのはこういう、飄々とした人たらしなのだろう、とも思ってしまう。

 衰えていく者、栄えていく者はどういった者たちなのか。2作品を鑑賞することで、しっかりと感じ取ってみてほしい。

■放送・配信情報
『平家物語』
フジテレビ「+Ultra」ほかにて、毎週水曜24:55〜放送
FODにて独占配信中
※放送日時は都合により変更となる可能性あり
声の出演:悠木碧、櫻井孝宏、早見沙織、玄田哲章、千葉繁、井上喜久子、入野自由、小林由美子、岡本信彦、花江夏樹、村瀬歩、西山宏太朗、檜山修之、木村昴、宮崎遊、水瀬いのり、杉田智和、梶裕貴
原作:古川日出男訳 『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集09 平家物語』河出書房新社刊
監督:山田尚子
脚本:吉田玲子
キャラクター原案:高野文子
音楽:牛尾憲輔
アニメーション制作:サイエンスSARU
キャラクターデザイン:小島崇史
美術監督:久保友孝(でほぎゃらりー)
動画監督:今井翔太郎
色彩設計:橋本賢
撮影監督:出水田和人
編集:廣瀬清志
音響監督:木村絵理子
音響効果:倉橋裕宗(Otonarium)
歴史監修:佐多芳彦
琵琶監修:後藤幸浩
(c)「平家物語」製作委員会
公式サイト: HEIKE-anime.asmik-ace.co.jp
公式Twitter:@heike_anime

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