史実と物語が融合する 『キングスマン:ファースト・エージェント』は原点にして異色作

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、就活以来スーツを着ていない花沢が『キングスマン:ファースト・エージェント』をプッシュします。

『キングスマン:ファースト・エージェント』

 『キングスマン』フランチャイズの3作目となる『キングスマン:ファースト・エージェント』。当初は、2019年11月に全米公開されるはずでしたが、ディズニーによるフォックス買収や、新型コロナの影響により、公開日が延期。この度、ようやくクリスマスイブに公開されました。

 本作は、『キングスマン』『キングスマン:ゴールデン・サークル』から遡ること約100年、スパイ組織”キングスマン”ができるまでを描く、前日譚にあたります。主演は、『ハリー・ポッター』シリーズのヴォルデモート卿や『007』シリーズのM役で知られるレイフ・ファインズ。今回は、タロン・エジャトン演じるエグジーや、コリン・ファース演じるハリーは登場しませんが、“英国らしさ”を体現するのにこれ以上のキャスティングはないでしょう。

 ファインズ演じる主人公・オックスフォード公は、早くに妻を亡くし、以降息子のコンラッドを溺愛してきました。平和主義のイギリス名門貴族である彼が、ある時、独自の諜報網からドイツやロシアの不穏な動きを察知。戦争の火種を生み出そうとする謎の組織の企みを阻止すべく、仲間と共に画策していくことになります。

 結論から言うと、「待った甲斐があった!」の一言です。シリーズの見どころのひとつ、ド派手なアクションシーンは今作でも健在。特に、オックスフォード公と怪僧ラスプーチンの対決は、1作目のエグジーVSガゼルに匹敵するベストバウトで、ファンであれば立ち上がって拍手をしたくなってしまうこと間違いありません。

 さらに、スパイ映画としてよくできている点が、史実とストーリーの融合です。今作には、前述のラスプーチンをはじめ、歴史上の人物がたくさん登場し、世界史の流れはそのままに新たな解釈が加えられています。『キングスマン』でハリーが言っていたように、スパイという職業は、どれだけ活躍してもその名が世間に知られることはありません。だからこそ、歴史の転換点の裏側に本当に彼らがいたのではないか。そう思わせる時代考証の上手さは、スパイ映画の重要なポイントといえます。

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