『ホークアイ』MCUドラマ内の評価は? 『ワンダヴィジョン』『ロキ』と作品性を比較

『ホークアイ』にしかない魅力

 これまでに配信されてきたMCUドラマは、どれも映画シリーズと同じようにアクション、コメディ、シリアスのバランスが良く、全体的に高い評価を受けてきた。しかしそのなかでも、『ホークアイ』には独特の魅力がある。それは、人間味あふれるドラマだ。先述した立ち上がりの遅さも、ケイトとクリントの人物像をはっきりさせ、その変化や成長を描くうえでは必要だったのだろう。クリスマスシーズンの楽しげなニューヨークの街でくり広げられるアクションは、生身の人間であるクリントの能力を見せる舞台としてぴったりだ。

 また、家族との関係も胸を打つ。彼の父親としてのやさしい顔は、これまでの“ホークアイ”のイメージとは全く異なっている。離れた家族を思う切なさ、自分の過去や仲間との別れを悔やむ悲哀、これまでのクリントの人生を集約したようなレナーの演技には釘付けになってしまう。一方で、見習いヒーローのチャーミングさも見逃せない。ケイトは『スパイダーマン:ホームカミング』のピーター(トム・ホランド)のようでもあるのだが、1人でもそれなりにヒーロー活動をしていた彼と違い、彼女の世界はクリントとの出会いによって一変した。これまでのドラマシリーズでは、既存のキャラクターの“『アベンジャーズ/エンドゲーム』後”が描かれてきたが、本作では新キャラクターであるケイトも物語の中心になっている。全6話のドラマシリーズでそのオリジンが語られるヒーローは、彼女が初めてだ。しかも意外なことに、彼女の存在はクリントの“『エンドゲーム』後”の物語を邪魔しない。それどころか、無口な彼からその思いを引き出す役割も担っている。2人が今後どのようなコンビになっていくのか、やはりそれそこが本作の最大の見どころであり、魅力となっていくだろう。

『ホークアイ』(c)2021 Marvel

 ほかのドラマシリーズのような派手さはないものの、『ホークアイ』にもやはり解くべき謎がある。ジャックの正体と目的はなんなのか。ナターシャの“妹”であるエレーナは、どんな活躍をするのか。そしてそれをどのように見せていくのかが、今後の人気を左右するだろう。しかしドラマの内容が良くできているのは確かだ。

 あとはケイトの言うように、「アピールが問題」なのかもしれない。一方で、S.H.I.E.L.D.の元エージェントであるクリントが主人公の『ホークアイ』は、人間ドラマ、特にクリントの贖罪をはっきりと見せるため、わざとトーンを抑えているのではないかとも思わせる。こじんまりとした印象を与える作品だが、そのスケール感が今までのMCUドラマにはなく、ちょうどいいのかもしれない。そのなかにあって、ケイトはもちろん、エレーナも今後、映画シリーズでも活躍が期待されるキャラクターだ。そうなったときにこの『ホークアイ』は、重要な位置づけの作品となるだろう。今はただ、クリントがクリスマスまでに家族のもとへ帰れることを祈るばかりだ。

参照

Samba TV: “Hawkeye” had the weakest start of any other Marvel series

■配信情報
『ホークアイ』
ディズニープラスにて、毎週水曜日17:00より日米同時配信
(c)2021 Marvel
公式サイト:disneyplus.disney.co.jp/program/hawkeye.html

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