橋本愛が“主役”となった『青天を衝け』第35話 愛希れいからも登場の華やかな回に

 大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)の主人公は栄一(吉沢亮)であり、放送が始まってしばらくはもう一人の主役として慶喜(草なぎ剛)がいた。だが、第35回「栄一、もてなす」ではこれまで表舞台に出ることが少なかった女性陣が主役。中でも栄一の妻・千代(橋本愛)がメインの華やかな回である。

 来日するアメリカ前大統領のグラント将軍(フレデリック・B)を盛大にもてなすため、栄一と喜作(高良健吾)はそれぞれの家族に協力を求める。日本が一等国として認められるためには、女性も公の場に出ていく必要があると考えたのだ。

 栄一の娘・うた(小野莉奈)や喜作の妻・よし(成海璃子)、大隈重信(大倉孝二)の妻・綾子(朝倉あき)に加え、第35回では4人の婦人が初登場する。それが、井上馨(福士誠治)の妻・武子(愛希れいか)とその養女・末子(駒井蓮)、大倉喜八郎(岡部たかし)の妻・徳子(菅野莉央)、益田孝(安井順平)の妻・栄子(呉城久美)である。

 千代たちに洋式のおもてなしを教えるのは、井上と2年間ヨーロッパを回ってきた武子。歯を見せてニッと笑う親愛の証やシェイクハンズ、ハグなど西洋式の挨拶を伝授していく。武子を演じるのは、元宝塚歌劇団月組トップ娘役の愛希れいか。美しい所作を教える立場として、これほどまでの適役はほかにいないだろう。しかも、着替えるのは踊りやすい華やかなドレス姿。タイトルバックに繋げる「ヒアウィーゴー」は彼女の愛らしさが爆発している。今も昔も恋バナに話が咲くもの。千代とよしのそれぞれの馴れ初めから綾子の「ワイフ」発言を経て、やがて彼女たちだけのガールズトークに突入していく演出も微笑ましい。

 結果的にグラントへのおもてなしは成功を収める。もちろんそれは栄一の尽力にほかならないが、千代の支えがあっての成果でもある。ジュリア夫人への優しい気遣いもそうだが、グラントが渋沢家を訪ねたいと言い出した時、気後れしている栄一を他所に飛鳥山に建てたばかりの新居の準備に取り掛かったのは千代だった。「なんという僥倖でございましょう」「ぐるぐるいたします」とピンチと捉えるのではなく、もはや楽しんでしまっている寛大な心。そのおもてなしの精神は、後の血洗島の名物・煮ぼうとうを振る舞う発想へと繋がっていく。栄一がパリ滞在中に食べた素朴なポトフが忘れらないという話から思いついた、上品な料理の箸休めである。

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