杉山すぴ豊のアメコミWeekly速報
『モービウス』を3点で解説 予告編で見える『スパイダーマン』『ヴェノム』とのリンク
こんにちは、杉山すぴ豊です。ここ最近のマーベル、DCのアメコミヒーロー映画まわりのニュースや気になった噂をセレクト、解説付きでお届けします!
日本時間の11月2日夜、アメコミ・ヒーロー映画『モービウス』の最新予告編が全世界同時にリリースされました。ジャレッド・レトが超人ヴァンパイアを演じます。ヒーローと書きましたが元々コミックではヴィランでデビューしたアンチ・ヒーロー、ダーク・ヒーローです。今回は「1.そもそもモービウスとは?」「2.映画『モービウス』の立ち位置」「3.今回の予告編から見えてくること」の3点で解説したいと思います。
1.そもそもモービウスとは?
モービウスはMorbius,the Living Vampire=モービウス・ザ・リヴィング・ヴァンパイアと呼ばれる、マーベル・コミックのキャラです。もともとはスパイダーマンのヴィランで1971年の『アメイジング・スパイダーマン101号』でデビューしました。このコミックではスパイダーマンことピーター・パーカーが自らの力を捨てて普通の人間になろうと薬を飲み、その副作用で両脇腹から2本づつ腕がはえてきてしまう! というすごいストーリーに登場しました。そこでピーターは友人で天才科学者のコナーズ教授に相談します。このコナーズ教授はトカゲ怪人リザードに変身してしまうという闇を持っています(アンドリュー・ガーフィールドの『アメイジング・スパイダーマン』のヴィランでしたね)。そこに偶然にもモービウスがからんできて、スパイダーマンvsリザードvsモービウスの三つ巴の戦いとなります。
モービウスは元天才科学者(化学者)のマイケル・モービウス博士が自身の病気を治すため吸血コウモリを使った特殊な血清を投与してしまい、結果吸血鬼の特性を持つダークな超人になった姿。つまりこのスパイダーマンのエピソードは、くも超人vsトカゲ人間vsコウモリ怪人の戦いです。
僕が、このエピソードを明確に覚えているのは日本で出版されたスパイダーマンの翻訳コミック5巻(光文社版)で紹介されており僕の愛読書でしたから(笑)。ヴァンパイアですが妖怪・魔物の類ではなく、科学の力で生まれたというのがポイント。そのへんのニュアンスが“ザ・リヴィング・ヴァンパイア=生きている吸血鬼”に込められているのかもしれません。その後、彼を主人公にしたコミックや他のヒーローたちとも共闘・共演するようになります。
2.映画『モービウス』の立ち位置
モービウスはマーベルのキャラですが、映画『モービウス』はアベンジャーズなどのいわゆるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の1本ではありません。ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)というくくりの中の1本です。
SSUとはSony's Spider-Man Universe=の略。ここでいうソニーは映画会社ソニーピクチャーズのことです。ソニーはMCUがディズニー傘下のマーベル・スタジオで本格的に展開される以前にスパイダーマンおよびスパイダーマンのコミックに登場するキャラの映画化権を手に入れていました。2002年から始まるトビー・マグワイヤ版の『スパイダーマン』3作、2012年からのアンドリュー・ガーフィールド版の『アメイジング・スパイダーマン』2作はこうした背景の中から生まれました。しかしMCUが盛り上がってくると、コミック同様他のマーベル・ヒーローとスパイダーマンの共演を映画でも観たい、との声があがります。
そこでソニーとマーベル・スタジオが話をしてトム・ホランド版のスパイダーマンはビジネス上は“ソニー籍”でありながら、映画としては“MCUの住人”である、ということが実現しました。とはいえソニーはMCUに関係なく、スパイダーマン系の映画を作ることが出来る。
そうして生まれたのがトム・ハーディの『ヴェノム』『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』、そして今回の『モービウス』。さらに先日発表されたアーロン・テイラー・ジョンソン出演の『クレイヴン・ザ・ハンター』(2023年1月13日全米公開予定)です。SSUに、アカデミー賞をとったアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』やトビー版、アンドリュー版のスパイダーマンが含まれるかは諸説ありますが、恐らく“スパイダーバース(パラレルワールドごとにそれぞれのスパイダーマンがいる的な考え)”という関係性を使って、これらも含まれるのではないかと思います。