ゲームやリブート作品での再評価続く ホラーアイコンはなぜお馴染みのものが多いのか?

昔のホラーアイコンはなぜ活躍し続ける?

 思えば、この年代のホラー映画はゲームに限らず、常に再評価され続けている。10月29日より公開された『ハロウィン KILLS』のような、時を経て作られる続編であったり、『スクリーム』のようなリブートドラマ化であったり、『エイリアン』のようにスピンオフ作品が近年まで製作されていたことも、彼らがまだまだ現役であることの一つの要因と言えるだろう。撮影やVFX技術がまだそこまで進歩してなかった時代のホラーは、時に今観ると劣っていると感じることさえある。しかし、本質的な「恐怖」が変わることのないことを証明するかのように、そして次世代にも語り継ぐために、今は映像をアップデートして彼らの物語を再び捉える傾向がある。スティーヴン・キング原作の『イット/IT』の悪名高きペニーワイズが良い例で、テレビ映画版の気味の悪さに加え、リメイク作品ではより洗練され、映像ではゴア描写が追加されるなど、当時の撮影技法ではチープに見えかけたシーンに迫力を与えたものだ。そうして再び全世界的に大ブレイクを果たした新生ペニーワイズは、今やハロウィンのコスプレに欠かせない存在にもなっている。

『IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。』(c)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 しかし、その一方で新興のホラーアイコンが誕生していない、または彼らの影に隠れてしまっているのも事実だ。冒頭で取り上げた『ヘル・レイザー』も現在リブート企画が進んでいるが、正直「またか」という印象を抱かないわけでもない。すでに昔ヒットしていて、世界的に知られている題材だからこそ出資者や製作側がグリーンライトを出しやすいという大人の事情もわかるが、果たして私たちは今後もずっと40年前のホラーアイコンに頼り続けていくべきなのだろうか。もしかしたら、彼らが登場する前のそのポジションには、ドラキュラや半魚人、狼男にミイラ男といったユニバーサル・モンスターズが君臨していたのかもしれない。当時の人々も、「またドラキュラ?」とか思ったのだろうか。では、ここから40年後の未来でホラー界のアイコンに立つのはどんなキャラクターなのだろう。

『アナベル 死霊博物館』(c)2019 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

 ビッグバジェット作品は過去のホラー映画のリブートだし、オリジナル新作映画はインディで、社会現象を巻き起こすほどの突出したキャラクターがいるかと聞かれると、『死霊館』シリーズのアナベルや『SAW』のビリー人形くらいしかパッと出てこない。奇遇にも、どちらも人形だ。もちろん、クリーチャーも次々に誕生してきていることはいる。しかし、例えば『クワイエット・プレイス』のあの盲目の宇宙生命体のように、それらはアイコンとしてフィーチャーされるのではなく、あくまで主人公たちの成長を描く上での試練としてしか機能していない印象が強い。さらに、ジョーダン・ピール監督を筆頭とした新進気鋭の映画作家たちは、そのホラー作品における「恐怖」を映画に登場する殺人鬼におくのではなく、その殺人鬼が生まれた社会的な背景においたり、より抽象的なものとして表現することも多い。そういったことも、特定のアイコンが生まれづらい要因の一つではないだろうか。

 いちホラー映画ファンとしては、素晴らしい出来だった『ハロウィンKILLS』のように、これから再リメイク、ないしはリブートされる古き良き殺人鬼の物語も楽しみつつ、これから彼らのようなアイコンとしての地位を築けられる、新人キラーの登場にも多いに期待したいところだ。

■公開情報
『ハロウィン KILLS』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
脚本:ダニー・マクブライド、デヴィッド・ゴードン・グリーン
出演:ジェイミー・リー・カーティス、ジュディ・グリア、アンディ・マティチャック、カイル・リチャーズ、ジェームズ・ジュード・コートニー、ニック・キャッスル、ディラン・アーノルド
製作:ジェイソン・ブラム、マレクアッカド
音楽:ジョン・カーペンター
製作総指揮:ジョン・カーペンター、ジェイミー・リー・カーティス、ダニー・マクブライド、デヴィッド・ゴードン・グリーン
配給:パルコ ユニバーサル映画
2021年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/原題:Halloween Kills/R-15
(c)UNIVERSAL STUDIOS 
公式Twitter:@HALLOWEEN_MOV

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