『キン肉マン』実写化に纏わる“呪い”とは? 綾野剛の完全に狂った“愛”を目撃せよ

「実写化、ええやん! ええやん!」

 記者会見場にハリウッドザコシショウが“乱入”してきた。その姿は伝説的超人「ベンキマン」。身体が和式の水洗便器、頭に大便のオブジェを冠する超人だ。記者団に向かって大便を投げつけるベンキマン。

「うんこは投げないでください!」

 女性司会者が制する声も届かず、「恐怖のベンキ流し」よろしく身体の便器に水を流そうとするが、うまく水が流れないトラブル。唖然とする記者たちを尻目に「全てを水に流す男」ベンキマンに扮するザコシショウは「はぁ!?」といつもの調子で言って一方的に会見の場から立ち去っていった。

 この会見では、なんと『キン肉マン』を実写映画化することが発表された。しかもそれは3部作になるという。

 その無謀とも言える挑戦で「監督」を務めるのは園子温。「『スター・ウォーズ』を越える」と意気込む。若干ピントのずれた感じがなんとも味わい深い。「いままで俳優で培ってきたすべてをこの作品に投下したい」とエリート超人・ロビンマスク役で出演するのは綾野剛。彼は初めて「プロデューサー」も務める。「集大成にしたい」と言う。

 これはWOWOWのオリジナルドラマ『キン肉マン THE LOST LEGEND』の一幕。国民的ヒーロー漫画『キン肉マン』の実写映画化に挑戦する人々を追ったドキュメンタリードラマだ。手掛けるのは『山田孝之の東京都北区赤羽』、『山田孝之のカンヌ映画祭』(いずれもテレビ東京)などのスタッフ陣。これらの作品で、俳優本人が本人を演じながら虚実を行き交い、なんらかの作品を生み出す、あるいはそれが破綻していく過程を描いてきたが、『キン肉マン THE LOST LEGEND』はまさにその「集大成」的な作品になる予感がする。

 プロデューサーの綾野はまず眞栄田郷敦に会いに行く。ウォーズマン役をオファーするためだ。無表情が絵になる郷敦は確かにウォーズマン味があるし、綾野と並ぶと、バラクーダ(※ウォーズマンの師。正体はロビンマスク)とウォーズマンのような関係性に見えてくる。

 綾野が眞栄田と一緒に訪れたのは調布。そこにはなんと綾野が自腹で500万円かけて建てたという「キン肉ハウス」があるのだ(原作では田園調布)。部屋の内部まで再現されたそれは映画本編のセットではなくスタッフルームとして使うのだという。

 完全に狂っている。
 だが、それがいい。

 心に愛がなければ、このスーパーヒーロー漫画を実写化することなどできないのだ。(ちなみにオープニングの町並みにもよく見ると「キン肉ハウス」が映っている。YouTubeで1話が無料配信されているので一度見た人も確認してほしい)

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