テラシマユウカの「映画の話しかしてなかった」
テラシマユウカ、瀬々敬久監督と語り合う 『護られなかった者たちへ』から学ぶべきこと
「今こそじっくり映画館で」
ーーある意味、本作も若い世代こそ観るべき作品のようにも感じます。
瀬々:重要ですね。テラシマさんもぜひ同世代に観てほしいですよね(笑)?
テラシマ:本当にそうです!
瀬々:本当に思ってる(笑)? テラシマさんたちのような若い世代に映画館に来てもらわないと僕らは大変なんですよ。
テラシマ:思ってますよ(笑)! でも、確かに若い世代の人たちは映画館に行くことへの興味が薄いなと思うことは多いです。
瀬々:大スクリーンで観るよりはスマホという時代なのかな。
テラシマ:配信で観る子も多いです。でも私は、ぜひ映画館に足を運んでほしいと思うんです。この映画は、私たちの世代が知らないけれど絶対知っておくべきものに触れるきっかけになる作品だと思うので、ぜひ今こそじっくり映画館でスクリーンと向き合って観てほしいです。
瀬々:本当に映画が好きなんだね。映画の良さはどういうところだと思いますか?
テラシマ:自分が体験しえないことを疑似体験できるところが私はすごく好きです。自分の人生の中で体験できることって限られているじゃないですか? 映画って数え切れないほど無数に作品があるし、ホラーだったり、恋愛だったりジャンルもたくさんありますよね。映画の世界に自分を投影することで、作品の数だけ色々な自分になれると思うんです。
瀬々:さすがです。映画っておっしゃる通り“体験”なんだよね。映画館のような場所に行って、みんなで観ることまで含めて魅力だと僕は思います。そうすることでより映画の“体験”としての重みが増すから、やはり映画館は重要な場所なんですよね。
テラシマ:配信も配信の良さがあると思うんですけれど、家で配信で観る映画ってどうしても映画館ほどの没入感は無いかもしれないです。映画館の暗闇の中で、まったく知らない人たちと一緒に2時間くらい時間を共にしているということが映画にとって1番重要だと思います。そうじゃないとその映画の世界の一部になりきれないというか。その点に関しては配信には勝てない良さがありますね。
ーーテラシマさんは本作の鑑賞体験を通して、自分の中で得たものはありますか?
テラシマ:自分と少し離れた現実ーー歴史だったり、テレビで観る出来事だったりーーに対して、私たちの世代は興味が薄い人が多いかと思うんです。『護られなかった者たちへ』を観ると、生活保護や震災など私たちの国で実際に起きたこと、起こっていることがどういうものなのか知ることができたことが自分にとってはすごく大きいです。しかも、それがミステリーというエンターテインメントになっているから、みんなも分かりやすく純粋に楽しみながら観られるんじゃないかと思います。不幸なこと、悲しい現実が起こったとしても、それで諦めるのではなくて、まだ希望があることを教えてくれる映画でした。このコロナ禍に生きる身として、不自由に感じることって皆さん多いと思うんですが、その中にも希望があるんだということを身に沁みて感じました。
瀬々:完璧です(笑)!
テラシマ:良かったです(笑)。監督の作品一覧を見ていると、本当に色んなカラーの作品があって驚くんですが、今後監督が撮っていきたい作品はありますか?
瀬々:人生って長いようで短いので、働けるのもあと10年くらいだろうと思ったりもするわけです。先ほど映画を作るきっかけに自主制作の映画監督たちの存在があったと言いましたが、自分の作品では『ヘヴンズ ストーリー』と『菊とギロチン』という作品が自主制作で作っているんです。あと10年のうちにまたそういう作品をもう1本作りたいと思っています。映画って、そういう自主制作の低予算でも好きなことをやっているものから、すごくCGが凝った豪華なものまであるという自由さが大切だと思うので。そういう意味で今後も作品の多様性は追求したいと思ってます。
テラシマ:映画は自由ですもんね。今後の瀬々監督の自主制作の映画も楽しみです。
■公開情報
『護られなかった者たちへ』
全国公開中
出演:佐藤健、阿部寛、清原果耶、倍賞美津子、吉岡秀隆、林遣都、永山瑛太、緒形直人ほか
原作:中山七里『護られなかった者たちへ』(NHK出版)
監督:瀬々敬久
脚本:林民夫
音楽:村松崇継
主題歌:桑田佳祐「月光の聖者達ミスター・ムーンライト」(タイシタレーベル/ビクターエンタテインメント)
配給:松竹
企画:アミューズ
制作:松竹撮影所
(c)2021映画『護られなかった者たちへ』製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/mamorare/