阿部寛が演じるキャラには“残念さ”が宿る 『テルマエ・ロマエ』の笑いを誘う絶妙な佇まい

 また、『結婚できない男』とその続編『まだ結婚できない男』(フジテレビ系)で演じた偏屈で独善的、皮肉屋の建築家・桑野信介役でも他にはいない風変わりなキャラクターを熱演し、時に独身貴族の悲哀も滲ませた。

 『ドラゴン桜』(TBS系)での元暴走族リーダーの弁護士・桜木建二役も正にハマり役だった。“学校法人”“教育現場”の中にあって、ここでも異質感を放っている。生徒に突拍子もない勉強法を次々に提案し、わかりやすい慰めや励ましを口にすることもなく容赦しない。最初は彼の真意を誰測りかねるものの、“きっとこの裏には何か考えがあるに違いない”、“どんでん返しが待ち受けているに違いない”と予感させ続ける。

 桜木もそうだが阿部が演じる人物像はどれも綺麗事を並べることなどなく、自身の欲望に真っ直ぐで嘘がない。コミカルな“変人”が多いが、とてつもなく人間臭くて、そんな“変人”が新たな扉を開けて周囲との距離を縮めたり、生きづらさを抱えた周囲の重荷を知らず知らずのうちに下ろしていく姿は、よりリアルな感動を巻き起こし、何より爽快である。

 阿部本人は自身について多くを語ることはないものの、インタビューなどで見かける、シャイな男が時折覗かせる照れくさそうな笑みに、人柄の良さと、そしてお茶目さが滲んでいるように思える。彼本人が“そんなことしそうにない”役どころを振り切った異様な熱量で体現してくれるからこそ、阿部が扮する唯一無二のキャラクターに我々はまた作品内で会いたくなってしまうのかもしれない。

 これまで紹介してきた三枚目路線の作品だけではなく、阿部のシリアスな演技が観られるであろう映画『護られなかった者たちへ』も要チェックだ。

■放送情報
『テルマエ・ロマエII』
フジテレビ系にて、10月2日(土)21:00~放送
出演:阿部寛、上戸彩
原作:ヤマザキマリ「テルマエ・ロマエ」(KADOKAWAエンターブレイン刊)
監督:武内英樹
脚本:橋本裕志
音楽:住友紀人
(c)2014「テルマエ・ロマエⅡ」製作委員会

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