阿部寛が演じるキャラには“残念さ”が宿る 『テルマエ・ロマエ』の笑いを誘う絶妙な佇まい

 映画『テルマエ・ロマエII』が10月2日に地上波放送される。

 原作はヤマザキマリの同名コミックで、古代ローマの浴場設計技師・ルシウス(阿部寛)が現代日本の銭湯にタイムスリップするという奇想天外なストーリーだが、この作品の映像化は何と言っても主演を務めた阿部寛の存在なしには成立し得なかっただろう。

 阿部だって“平たい顔族”のはずなのに、その中にあって異質感が漂う。189cmの長身に彫りの深い端正な顔という武器を生かし「古代ローマ人」を現代に蘇らせてくれた。

 かつて“二枚目俳優”と呼ばれていたように、彼の視覚的特徴に低い落ち着いた声まで揃えば通常は近寄りがたいオーラが付き纏い“浮世離れ”感が出るものだが、彼はこの“浮世離れ”感にクスッと笑えるエッセンスを振りかけ、とても愛すべき憎めないキャラクターとして作品内に存在してくれる。これは彼が作ってくれている“隙”によるところも大きいだろう。それゆえか、阿部が主演を務めた作品はシリーズ化されることが多いように思える。

 阿部が演じるキャラクターはいずれも本人はいたく真面目に通常運転で振る舞っているものの、いちいちクセが強い。“情けない”“ダメ男”ともまた違う、どこかいつも付き纏う“残念さ”を抱えており、だけれども本人はそれに全く気付いていない。そこにとてつもない面白味が宿るのだ。絶妙な佇まいでいつだって笑いを誘う。それは他の俳優にはない阿部だけの魅力と言えるだろう。

 仲間由紀恵とW主演を務めた 『TRICK』シリーズ(テレビ朝日系)では、自称天才物理学教授・上田というコミカルでなんとも奇妙なキャラクターを好演し、仲間演じる自称天才マジシャン・奈緒子との掛け合いはツッコミどころ満載で、“男女のバディもの”に新たな型を作った。

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