モルカーボールにZoomの活用も コロナ禍で変化する“応援上映”の形

 2016年に公開された『KING OF PRISM by PrettyRhythm』が話題になったことで「応援上映」という上映スタイルはより広がりを見せ、浸透していった。「応援上映」とは、上映中の声援やサイリウムの使用、コスプレなどが可能な上映スタイルのことだ。

 また、『KING OF PRISM by PrettyRhythm』以前にも、似たスタイルとして『アナと雪の女王』で「みんなで歌おう♪歌詞付版」として導入された「シングアロング上映」、『ガールズ&パンツァー 劇場版』に取り入れられた「マサラ上映」などがある。そして、映画は静かに鑑賞するものというイメージを覆した応援上映はアニメ作品だけではなく、『HiGH&LOW THE MOVIE』や『シン・ゴジラ』といった実写作品でも行われ、人気を博した。

 しかし、今日のコロナ禍では応援上映に見られる声援や、アフレコといった“発声‘”を伴う応援は不可能となってしまった。その反面、従来の応援上映に代わる画期的な上映スタイルも誕生しているようだ。

声を出さなくても応援できる“モルカーボール”

 応援上映の魅力の一つである“発声”が不可能となってしまった今、映画館での応援上映はどうなっているのだろうか?

 今年7月に公開された映画『とびだせ!ならせ!PUI PUI モルカー』は、モルモットをモチーフとした癒し系の車「モルカー」の世界を描いたパペットアニメ『PUI PUI モルカー』の総集編として上映された。

 劇場では入場者プレゼントとして「ならせ!モルカーボール」が配られた。モルカーがデザインされたこのボールは、鳴らすとモルカーの鳴き声のような音が鳴る。上映中に鳴らすことで、観客はモルカーの世界に入り込むことができ、さらには「ほかの観客と言葉を交わすことができなくても、モルカーボールを観客同士で鳴らすことで一体感を感じられた」という声も見られた。短い総集編の映画ではあるが、「モルカーボールを観客同士で鳴らす」ことで映画館でしかできない体験を生み出していると言える。

 また、HUMAX CINEMAで定期開催されている「ヒューMAX上映会」は、映画館ならではの新しい応援上映のスタイルを確立しつつあると言える。「『映画』と『映画館』を楽しむ」をコンセプトとしたこの上映会では、『KING OF PRISM』シリーズや『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』などのアニメ作品から、『ボヘミアン・ラプソディ』、『バーフバリ 王の凱旋 完全版』といった実写作品まで幅広く上映されている。上映形態は「特殊上映」と「参加型イベント上映」の2種類があり、「特殊上映」ではコスプレ、サイリウムの使用、「参加型イベント上映」ではスタッフらによる前説、後説やコスプレ、サイリウムに加え太鼓などの打楽器、クラッカーの持ち込みなどの音を出す応援が可能となっている。特に「参加型イベント上映」は応援方法のバリエーションが豊富なため、声が出せないという縛りがあるにもかかわらず、盛り上がりを見せており、大変好評であることがうかがえる。

 コロナ禍の今、映画館での応援上映は“音”を活用することで、応援上映ならではの盛り上がりや一体感を引き出しているようだ。

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