『おかえりモネ』百音が心の内を話せる“明日美”という存在 対照的な2人の関係性

 連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合)第20週「気象予報士に何ができる?」では、百音(清原果耶)がついに気仙沼に帰り地元で働き奮闘する様子が描かれるようだ。

 百音が東京を去るということは、汐見湯での幼なじみ明日美(恒松祐里)との一つ屋根の下での生活もおしまいということになる。そういえば、東京編で登場した明日美の服装やメイクが一気に垢抜けていて、視聴者に舞台転換されたことを視覚的に感じさせるのに一役買っていたことがもはや懐かしく感じられる。

 思い返せば、明日美が百音と菅波(坂口健太郎)のなかなか発展しないじれったい関係性にしびれを切らして、菅波に少し強引なまでに圧をかけてみたり、彼や百音の本心を聞き出そうとしつこく試みたことで、彼らの関係性が前進するのに貢献したところも多分にあった。

 よく静かに一人考え込む百音と、あっけらかんとしておりズバズバと自身の考えを言う明日美というコントラストが見られたが、なんだかんだいいバランスの2人だ。

 そもそも、明日美にとって本来百音は近くにいると辛くなってしまう存在にもなりかねない。幼少期から想いを寄せ続ける亮(永瀬廉)は一切自分には振り向いてくれず、彼の心の中にいるのはいつだって百音だった。しかもそれに百音は気付いていない(少なくとも自覚的ではなかった)。さらに、仕事の面でも明日美は華やかな場への憧れもあって仙台の大学への進学から上京しアパレルショップに就職を果たしたわけだが、全く人前に出たり注目を浴びることを望んでいたわけではなかった百音が、いつの間にか気象コーナーの中継キャスターに抜擢され、全国放送デビューを果たす。こうやって振り返ると、明日美が“なりたかったもの”“興味があるもの”に百音の方がいつだって意図せず近いところにいるように思える。それも、本人が心の底から望んでいるわけではなかったり、無意識ながらに次々手に入れていくかに見えてしまいかねない百音の姿に、意地悪の一つでも言ってやりたくなってもおかしくなさそうなものだ。

 しかし、明日美は決してそんなことをしない。そんなことをしても相手を不本意に傷つけるだけでなく、何より自分自身のことを嫌いになってしまい陥れてしまうことを明日美はおそらく本能的にわかっている。それから、本当に百音に他意がないことも重々承知しているし、彼女からすれば望んでいない展開にも必死に向き合い迷い努力している姿を明日美はしっかり見ている。だからこそ、百音も一見したところ正反対の明日美に遠慮せずに心の内を少しずつ話せるのだろうし、いつだって“話さなくてもいい”という選択肢も暗にセットしてくれ、そんなことで気まずくならない明日美との関係が心地良く感じられるのだろう。「卑屈」という言葉から最も遠い場所にいるのが明日美だ。

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