『平家物語』で名タッグ再び 山田尚子×吉田玲子が描いてきた心情描写の妙

 2014年には『たまこまーけっと』の世界のその後を描く劇場作品『たまこラブストーリー』が公開となる。タイトル通り、山田にとってはじめてのラブストーリーである本作では、卒業の足音も近づきはじめる高校3年生になった主人公・たまこと、彼女に想いを寄せる幼なじみ・もち蔵にスポットが当たる。ふたりの不器用なやりとりと、これに伴う胸の内が、繊細で瑞々しい映像によって表現される様子が見どころだ。

『たまこラブストーリー』本予告

 2016年に公開された『映画 聲の形』では、聴覚障害や過去のいじめを内包しながら、人と人が対話を通して歩み寄る困難さ、それでも残る希望といった、大今良時の原作コミックが持つ複雑なテーマを見事に映像化してみせた。ちなみに本作でヒロイン・西宮硝子とその妹・西宮結絃を演じた早見沙織と悠木碧は、『平家物語』にも出演することが明らかになっている。

映画『聲の形』 本予告

 2018年には山田も各話絵コンテ・演出で参加している『響け!ユーフォニアム』シリーズのスピンオフ作品『リズと青い鳥』が公開される。吹奏楽部員である鎧塚みぞれと傘木希美が互いに向ける感情を、台詞以上に映像によって雄弁に語る演出は『たまこラブストーリー』や『映画 聲の形』における試みをさらに高度化・先鋭化させたものといえるだろう。

『リズと青い鳥』本予告 60秒ver.

 京アニ作品では、十代の少年少女を主人公とした現代劇を描いてきた山田尚子。丁寧に描かれた彼らの感情の機微には、多くの観客が感情移入したことに違いない。これもやはり、脚本を担当した吉田玲子の手腕もとても大きいはずだ。

 時代や境遇が違っても、それを現代に生きる我々の胸にも響くものとして伝え切る力が、ふたりの作品には宿るだろう。『たまこまーけっと』以来9年ぶりとなる、このタッグで手掛けるTVアニメシリーズである『平家物語』。本作にも、これまでの作品と同様の大きな期待を寄せ、観ることができる日を楽しみに待ちたい。

■放送・配信情報
『平家物語』
フジテレビ「+Ultra」ほかにて、2022年1月より放送開始
FODにて、9月15日(水)24:00より先行独占配信
※放送、配信日時は都合により変更となる可能性あり
声の出演:悠木碧、櫻井孝宏、早見沙織、玄田哲章、千葉繁、井上喜久子、入野自由、小林由美子、岡本信彦、花江夏樹、村瀬歩、西山宏太朗、檜山修之、木村昴、宮崎遊、水瀬いのり、杉田智和、梶裕貴
原作:古川日出男訳 『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集09 平家物語』河出書房新社刊
監督:山田尚子
脚本:吉田玲子
キャラクター原案:高野文子
音楽:牛尾憲輔
アニメーション制作:サイエンスSARU
キャラクターデザイン:小島崇史
美術監督:久保友孝(でほぎゃらりー)
動画監督:今井翔太郎
色彩設計:橋本賢
撮影監督:出水田和人
編集:廣瀬清志
音響監督:木村絵理子
音響効果:倉橋裕宗(Otonarium)
歴史監修:佐多芳彦
琵琶監修:後藤幸浩
(c)「平家物語」製作委員会
公式サイト: HEIKE-anime.asmik-ace.co.jp
公式Twitter:@heike_anime

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