蒔田彩珠が表現する“みーちゃん”の葛藤 『おかえりモネ』姉妹の涙が切なすぎる

 亜哉子が電話をしてもつながらず、未知がかけても出ないのに、百音の電話にだけは出る亮。百音が通話をスピーカーにしたことで「俺、もう全部やめてもいいかな」「俺もう全部やめてえわ」「ごめん。俺やっぱモネしか言える相手いない」という亮の言葉を未知も聞いてしまった。スピーカーにしたことが、これほど悔やまれるとは。

 傷ついた亮のことを思い、未知の思いも爆発する。「なんで? りょーちん、ずっと頑張ってきたじゃん。高校卒業して、すぐ漁師になって。新次さんの代わりに、ずっとずっと頑張ってきたじゃん! なのに、なんでいつまでもしんどい思いしなきゃなんないの?」「逃げたいんだよ。でも、逃げられないじゃん! だって、だって誰かが残んなきゃ。残んなきゃ」

 未知に対して、百音は「ごめん」ということしかできない。そんな百音に「謝んないでよ。ずるいよ。なんでお姉ちゃんなの?」と、亮が褒めてくれたワンピースを百音に投げつける未知。2人の涙がそれぞれに切なくて、ヒリヒリと胸が締め付けられるシーンになった。

 以前、菅波が百音に「深刻な問題に対処するには当事者ではない人間の方がより深く考えるべきだと僕は思うんです。今痛みを抱えている人や近しい人は考えることすらつらいでしょ?」と語っていたが、新次には耕治がいて、彼が苦しみのあまり暴れたときに、駆けつけて抱きしめていた。亮が島から離れた視点を持つ百音にだけ本音を伝えられるのも、自然なことに感じられる。百音なら、これから先も亮や未知の問題を受け止め、一緒に考えてくれる存在でいられるはずである。

 第69話で耕治が百音の勤める気象情報会社を訪れたときの、朝岡(西島秀俊)との会話を思い出す。耕治にとって、娘2人は希望だという。そして、娘たちだけでなく亮や百音の幼なじみたち、子どもたち全員に「どうなっか分かんねえ世の中だ。もう、どこ行ったってかまわねぇ。ただ、お前たちの未来は明るいんだって。決して悪くなる一方じゃないって、俺は信じて言い続けてやりたい」と言ってやりたいと話していた。

 島から離れたことがある耕治や島を離れている百音にだから伝えられることがあるように、島にとどまり、島で生きる覚悟をした未知や亮にしか分からないこともあるのだろう。未知や亮に心から寄り添える百音だからできることがあるはずで、未知が今後どんな影響を受けていくのか。細やかな演技で未知の深い内面を表現できる蒔田彩珠が、未知の成長をどう見せてくれるのか。今はとにかく、第16週の展開が気になる。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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