『おかえりモネ』百音と菅波先生、2人に生じるズレ 災害によって問われる想像力

「考えなくちゃいけないんです、もっと」

 連日の記録的な大雨により全国各地で崖崩れや河川の氾濫が起きている。前日に続いて「ドラマの中で土砂災害の描写があります」とテロップで表示された『おかえりモネ』第67話では、困難に直面する相手への想像力のあり方が問われた。

 「モネはちゃんとやれてますか?」。突然現れた朝岡(西島秀俊)にサヤカ(夏木マリ)が声をかける。朝岡は土砂災害が発生した石音町の様子を確かめ、その足で登米を訪れていた。「行ってらしたんでしょ? いてもたってもいられなくて」。泥で汚れた朝岡の靴を見ながらサヤカは朝岡の思いを代弁する。サヤカと朝岡の出会いは8年前の豪雨災害がきっかけだった。石音町で土砂崩れが起き、集落全体が土砂に飲み込まれた。過去に土砂災害が発生しなかった地域で一時的な豪雨により甚大な被害が生じる。食い入るようにモニターを見つめる朝岡の表情は、これまでにない事態が起きつつあることを示していた。

 現代に戻って、今回の大雨で石音町の住民は一人も怪我をすることなく避難。前回の教訓を生かして、災害が起きる前に行動したことが功を奏した。朝岡も「本当に良かった」と安堵する。「ここのところ気象は激しさを増しています。時に過去のデータや我々の予測を大きく裏切る」と朝岡。天気予報の精度は向上しているが、それを上回る気象の変化が想定外の事態をもたらすのだ。

 さらに「石音町のようなところは、何か別の問題に直面しているのではないか」と語る。気候変動に加えて目を向けなくてはならないのは、住民が災害のたびに生活の基盤を失ってしまうこと。朝岡の指摘を受けて、内田(清水尋也)は「これだけ災害が繰り返されるってことは、もはや住めなくなってるとか」と言い、社会部記者の沢渡(玉置玲央)も「もうその土地を離れるしかない」と続ける。その言葉に百音(清原果耶)が「それは無理な話ではないか」と反応し、朝岡も同意する。

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