上白石萌歌、『子供はわかってあげない』は新たな代表作に 主人公に与えた豊かな魅力

 上白石といえば、これまでにも印象に残る水泳選手の役を演じている。2019年に放送された、『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)と、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(NHK総合)がそうだ。前者ではとある高校水泳部の絶対的エースでを、後者ではオリンピック選手を演じ、物語の中心に立つことも多々あった。上白石と「水泳」は、どうにも深い関係にあるようだ。詳述は避けるが、今作『子供はわかってあげない』においては、朔田美波の“泳ぐことができる”というのが欠かせぬ要素となっている。「水泳」を介してエピソードが連なっていくのだ。“上白石萌歌と水泳”の関係については、まだまだ今後の広がりを感じずにはいられない。

 筆者個人としては今作の公開に関して、特別な思い入れがある。というのも、2019年に上白石へのインタビューをしていたのだ(参考:上白石萌歌「何か新しい顔を見せたい」 同世代からの刺激を受けて立つ、次の舞台)。これは、倉持裕の作・演出による舞台『お勢、断行』の上演に向けての心境を聞かせてもらったもの。ところが同作は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、開幕前日に全公演の中止が発表された。開幕予定日は2月28日。上白石の誕生日だ。彼女は20歳の誕生日に、この舞台の初日を迎えるはずだった。そしてそれに続くかたちで、『子供はわかってあげない』が公開されるはずだったのだ。上白石自身、とても辛く悔しい思いをしたはず。インタビュー時の彼女の力強いまなざし、丁寧な言葉選び、自分の関わる人々をリスペクトする姿勢ーー彼女の笑顔から垣間見えた、あの誠実さが忘れられない。そんな逆境を乗り越えて、彼女はいま、素晴らしい泳ぎを見せているのだ。爽やかな笑顔を浮かべる、上白石萌歌の泳ぎに続いていきたい。そんな思いを抱いてしまう、彼女の代表作が誕生したのである。

■公開情報
『子供はわかってあげない』
全国公開中
出演:上白石萌歌、細田佳央太、千葉雄大、古舘寛治、斉藤由貴、豊川悦司
監督:沖田修一
脚本:ふじきみつ彦、沖田修一
音楽:牛尾憲輔
原作:田島列島『子供はわかってあげない』(講談社モーニングKC刊)
企画・製作幹事:アミューズ
配給:日活
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
(c)2020「子供はわかってあげない」製作委員会(c)田島列島/講談社
公式サイト:agenai-movie.jp
公式Twitter:@agenai_movie

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