『東京リベンジャーズ』で紅一点の今田美桜 “正ヒロイン”への軌跡を振り返る

 血で血を洗う男たちの抗争が展開する映画『東京リベンジャーズ』において、紅一点の存在となっている今田美桜。その声や仕草によって、彼女にしかできないヒロイン像を立ち上げているように思う。決して出番が多いとはいえないが、彼女の姿は強く印象に残る。本作における今田の貢献度は、非常に大きいものなのだ。

 今田が本作で演じるヒロインの名は、通称“ヒナ”こと橘日向。主人公・タケミチ(北村匠海)が現在と過去とを往来する本作の物語の、軸となるキャラクターである。簡単にあらすじに触れておこう。冴えない日々を過ごすタケミチは、ある日、高校時代の恋人・ヒナが死んだことを知る。かつてはただの暴走族だったものの、いまではヤクザも恐れる半グレ集団となった「東京卍會」の抗争に巻き込まれてのことらしい。やりきれない思いを抱えるタケミチだが、いまさらどうすることもできない。彼はこんな危険な集団とは無縁の人生を送ってきたのだ。そんな折、彼は駅のホームから転落。死んだかと思いきや、目を覚ますとそこに広がるのは10年前の光景。不良時代へとタイムリープし、ヒナの死を防ぐため、そして冴えない自分と決別するため、タケミチのリベンジが幕を開けるのだーー。

 先に述べているように、今田が演じるヒナは本作において重要な位置を占めている。タケミチが奮起するきっかけを生み出すのが彼女であり、タケミチの行動によって物語は駆動する。つまり、ヒナがいなければこの物語は生まれないのである。“タイムリープ”という面白いギミックが施されている物語だが、やはり何よりもまずは、主人公の行動の動機が重要だろう。もちろん、ヒナに向き合うタケミチ役の北村の演技があってこそのものでもあるが、今田は輝く笑顔と涼やかな声で、男たちの凄み合う表情と怒声が交差する本作に華やかさを与え、ヒロイン像を、オリジナリティ溢れる“ヒナ像”を立ち上げている。「恋愛」が主軸となる作品においては当然ヒロインが負うものは大きいが、本作のヒロインもまた、背負っているものがとても大きいのだ。

『おかえりモネ』(写真提供=NHK総合)

 そんな今田といえば、放送中の朝ドラ『おかえりモネ』(NHK総合)にも登場したばかり。少しずつ存在感を示し出しているところだ。演じるのは、神野マリアンナ莉子。主人公・モネ(清原果耶)が勤めることとなった「ウェザーエキスパーツ」の先輩気象予報士だ。「マリアンナのお天気中継」という冠コーナーを持ち“朝の顔”となっている彼女は、勝ち気だが優しくバイタリティ溢れる人物で、本作『おかえりモネ』そのものにも活気を与える存在になっていると思う。さしあたり現時点では、正ヒロインのモネに対して、“第2のヒロイン”ともいえる地位を築いているのではないだろうか。神野は新人のモネを導く存在であるのと同時に、二人三脚で並走してくれるような人物でもある。ここでも演じる今田に求められているものは大きいわけだ。

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