『おかえりモネ』アヤとコージーの意外な馴れ初め 清原果耶と坂口健太郎の未来はいかに

 『おかえりモネ』(NHK総合)第27話。ジャズ喫茶のマスター「トムさん」こと田中知久(塚本晋也)がおもむろに口を開く。ソニー・ロリンズやウェイン・ショーターたちジャズの巨人が見守る店内で、百音(清原果耶)の両親の馴れ初めを話し始めた。

 2014年も年末にさしかかり、菅波(坂口健太郎)の個人授業もひと休み。年が明けると百音にとって初めての気象予報士試験が待っている。「休みだからってサボらないでくださいね」。念を押す菅波に「努力します」と百音。すぐさま「努力しますっていうのは……」と説教モードに入りかけた菅波を、百音はあわてて制止する。

 他人から見たらくすぐったいようなやり取りも、当人たちにはなにげない会話で、自分が見られていると気づかない百音も、父と母の話題には敏感に反応する。「いいんじゃないですか。ご両親にだって青春はあったでしょ」。そうなんだけど、それをあなたが言うんですかとざわつかせる菅波はさすがのコメント力。それよりも、いつの間にそんな話をする2人になっていたのかという驚きである。2人の未来は天気のように予測できないが、少なくとも勉強を教えている間、菅波には登米を訪れる理由が増えた。

 さて、トムさんが語る亜哉子(鈴木京香)と耕治(内野聖陽)のラブストーリーである。端的に言うと「教育学部か何かの真面目そうなきれいなお嬢さん」が「きったねえライブハウス」で演奏するトランペッターに魅かれ、その後、結婚して二児の母になるまで。耕治が亜哉子に一方的に惚れた、と信じる百音と未知(蒔田彩珠)の予想を裏切って、真相は「アヤちゃんがもうコージーにべたぼれよ。メロメロよ」。……そんなはずはない、でもトムさんが言うなら本当なのだろう。副音声のナレーションは「悲痛な表情になってしまう百音」で、百音の中の父親と母親像が音を立てて崩れていった。

 トム、お前、なんてことをしてくれたんだ……。だがそれで終わらず、回想シーンで追い討ちをかけるように耕治のとどめの一言が。百音はあたかも過去に戻って若い両親を見ているような心境だ。亜哉子が渡そうとしたのは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のチケット。意を決して告白するも、耕治は「地元の島に忘れらんねえ人がいます」。長髪タンクトップ男(耕治)を前に亜哉子は玉砕。このままでは2人が手を取り合って生きる未来はない。しかし視聴者は知っている。百音がちゃんとこの世に生を受けたことを。「ここからアヤちゃんの大逆転が始まるから」。わかってる、トムさん。亜哉子がつかんだのは未来行きのチケットだった。

※塚本晋也の塚は旧字体が正式表記

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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