『賭ケグルイ』なぜ俳優の飛躍のきっかけに? 浜辺美波、高杉真宙らの3年間を振り返る
上流階級の子女たちが集う私立百花王学園を舞台に、勉強や進路や恋愛といった学園ドラマにおける典型的要素そっちのけでひたすらギャンブルに没頭していく。『賭ケグルイ』シリーズのそうした側面は、コミック原作だからこそ許される非現実性というメリットを最大限に活かしており、そういった点では、各校を仕切っていた輩が集結した高校で学校の頂点を取ろうと喧嘩に明け暮れる者たちを描いた『クローズ』に代表されるような“ヤンキーもの”と近しいにおいを感じる。
劇中で描写されるギャンブルは、単にあぶく銭を稼ぐためのものではなく、ギャンブルによって司られた学内のカーストを上り詰めるためという意味を持ち、いかにして相手を貶めるかと各自がここぞとばかりにイカサマを仕掛け、それをいかにして見破るかというゲーム性も携えている。ここもまた、喧嘩シーンの躍動に重きを置くヤンキーものと通じる部分であり、どちらも物語のほとんどが学校内で展開していくというただ一点においてのみ広義の“学園ドラマ”でありつづける。いずれにせよ、彼らがわざわざ学校に登校する理由など一ミリも見えてこないのがこの“らしからぬ”学園ドラマのもっとも愛すべき部分といえよう。
そうした前提のもとで、この『賭ケグルイ』シリーズも学園ドラマに分類される作品であると仮定するならば、外面から捉えたときには他の学園ドラマ(キラキラした恋愛青春模様を描くものでも、教師を軸にした社会派性を備えたものも含め)と同じように、「若手俳優たちのアンサンブル」という部分に非常に大きな意味が与えられることになる。ドラマの第1期が放送されたのは2018年1月。その後2019年4月にドラマ第2期と、5月に映画第1作、そして映画第2作『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』が現在公開されており、すでに3年の月日がこの作品全体に費やされていることになる。それだけの期間があれば、当然初めは“若手俳優”と呼ばれたキャスト陣が、その一歩先の段階に到達していてもおかしくはない。
ドラマ第1期からメインキャストを演じてきた3人は、すでに別格にいる。2017年に『君の膵臓をたべたい』でブレイクを果たした蛇喰夢子役の浜辺美波は、その後も主演作が相次ぎ、いまや20歳前後の俳優界では間違いなくトップを走っている。中学生の頃から多方面で活躍してきた鈴井涼太役の高杉真宙は、ドラマではバイプレイヤーとして、映画ではメインキャスト級の役柄で存在感を示す。またモデルから飛躍を遂げて女優としても大成した早乙女芽亜里役の森川葵は、最近バラエティ番組で持ち前の天才肌ぶりを発揮。それぞれが安定感をもって活躍の場を拡げており、まだまだ伸びる余地を残しながらもフレッシュな“若手俳優”というイメージから脱しようとしている。