『ドラゴン桜』鈴鹿央士と東大専科が対決 「バカとブスこそ東大に行け」に込められた真意

『ドラゴン桜』鈴鹿央士と東大専科が対決

 専科の4人は桜木が課した基礎練習とSNS発信のタスクにすぐに飽きてしまう。しかし、自己肯定感が強く、納得しないとやらない性格は意味がわかれば従う素直さの裏返しでもある。「バカとバカが教え合ったところで何か意味あんのかよ」ともっともな疑問を呈する瀬戸に、桜木は「バカ同士だからこその利点がある」と返す。その理由を「自分よりほんの少しだけできるヤツが相手だと、自分にもできるはずだと脳が勝手に判断するんだよ。それに教える側も知識が整理され、曖昧な部分が明確になる。理解度は格段に上がる」と説明。前作のスクラム勉強法を連想させるが科学的な根拠も取り入れた。

 ではSNSには何の意味があるのか? その真意は藤井との対決で明かされる。実際の過去問を使った勝負で、欠席の瀬戸を除く3人は藤井の点数を上回った。なぜ藤井は敗れたのか? その答えは東大専科の特訓にあった。英語のテストで難しい単語を使ってスペルミスをした藤井に対して、3人は自分にわかる単語でシンプルに答えた。シンプルゆえに論理の飛躍もない。そうやって、わかりやすく伝える力をSNSで鍛えたのだ。地理の問題では、一方の立場のみ解答した藤井は半分しか得点できなかったが、3人は対立する両者の主張を盛り込んだ。

 「お前の敗因は問題のせいなんかじゃない。その性格の悪さだ」。歯に衣着せない指摘に藤井は目をむく。「お前はたった1人で勉強した。だが、お前の失点は誰かの助言さえあれば、簡単に避けられたものばかりだ」。東大が求める多角的な視野を持つ人材は、他者の気持ちが想像できる人間。「東大は無理だ」という一言には理由があったのだ。桜木の言葉は藤井を思って言ったものだったが、プライドの高い藤井はそれを受け入れられない。

 負けた藤井を馬鹿にする生徒たちを桜木は一喝。第1話でも語った東大へ行く理由をふたたび口にする。「どんなに努力しても、本質を見抜く力がなければ、権力者と同じ土俵にすら立てない」。「他人を叩き、批判して、文句を言って何が変わる? 自分は関係ねえからなんて言ってたら、一生だまされて、高い金払わされ続けるぞ」。馬車馬になるな、そのために勉強しろと力説。「お前らにはこの俺がいる。どんなにバカでマヌケな奴でも、やる気さえありゃ東大に合格させてやる」。そして冒頭の言葉につながる。

 第1話の「東大に行くな」から「東大に行け」への変化は、生徒たちの関心の高まりと桜木の本気度を反映している。3話を丸ごと使う大胆すぎる構成で、手垢のついた名セリフを2021年に見事に甦らせた。受験勉強を大文字のエンタメに昇華する『ドラゴン桜』は地中深く根を張り、来るべき成長の時を待つ。

※高橋海人の「高」は「ハシゴダカ」が正式表記。
※鶴ヶ崎好昭の「崎」は「たつさき」が正式表記。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
日曜劇場『ドラゴン桜』
TBS系にて、毎週日曜21:00~放送
出演:阿部寛、長澤まさみ、高橋海人(King & Prince)、南沙良、平手友梨奈、加藤清史郎、鈴鹿央士、志田彩良、細田佳央太、西山潤、西垣匠、吉田美月喜、内村遥、山田キヌヲ、ケン(水玉れっぷう隊)、鶴ヶ崎好昭、駿河太郎、馬渕英里何、大幡しえり、深田竜生(少年忍者/ジャニーズJr.)、林遣都、佐野勇斗、早霧せいな、山崎銀之丞、木場勝己、江口のりこ、及川光博ほか
原作:三田紀房『ドラゴン桜2』(講談社刊)
プロデュース:飯田和孝、黎景怡
脚本:オークラ、李正美
演出:福澤克雄ほか
製作著作:TBS
(c)TBS

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