『珈琲いかがでしょう』第2話で描かれた“夢” 中村倫也が教えてくれる人生の“甘さ”と“苦味”

「苦味を知ったからこそ、描けるものもあるのでは?」

 一方、2杯目の「だめになった珈琲」は、ほかでもない礼の物語だった。雅のように夢に向かって突き進んでいた時期があったこと。その時期に、精一杯背伸びをしてエスプレッソマシンを購入したこと。しかし、いつしか夢に向かう自分自身もエスプレッソマシンも動けなくなってしまったこと。

 雅の忘れ物を取りに行っただけの青山に、礼は心の中のドロドロを吐き出すように語りかける。誰かに聞いてもらいたかった声を、抽出していく力が青山にはあるのかもしれない。夢見る若者たちの作品を見て「全部パクリだ」と言い放った礼の言葉は、そのままブーメランのように自分自身に突き刺さり、やがて絵筆を手にすることができなくなってしまった。

 「学ぶ」と「真似る」は同じ語源だという説がある。私たちが言葉を話すことができるのも、真似するところから始まる。絵を描くのも、模写することから始まる。きっと、青山の珈琲も、最初は誰かの真似から始まったに違いない。そのリスペクトの先に、自分らしさを見つけていくことができるもの。

 しかし、雅が実感したように、根っこの部分がしっかりしていないと、その上にリスペクトが積み上がっていかない。自分のものにならないというのは、その根っこがぐらついている証拠。

 大事なのは、根っことなる自分自身をメンテナンスし続けることなのだろう。誰かに嫉妬心を抱いたり、自分に劣等感を持ったりするのは、避けられないものだ。まるで水道水に含まれるカルキが結晶化して、ボイラーに溜まってしまうのと同じように。

 特に、夢を抱いたたくさんの人が集まる東京では、カルキとなる情報の濃度も高くなりがちだ。だから、エスプレッソマシンを清掃するように、自分の心の中に溜まっていくドロドロをうまく排出する方法も知らなくてはならない。青山に言われた通り、見様見真似でエスプレッソマシンを清掃していく礼。挫折し、傷ついた礼の心をケアする方法を学ぶように。きっとそれを知った礼ならば、再び夢を見ることができるはずだ。

 雅と礼。夢を追いかける2人の女性を温めた物語が描かれるのと同時に「人殺し」というギョッとするような言葉が飛び出すのも、本作の魅力。三平(磯村勇斗)が、青山を執拗に追いかけてくる理由が、これから徐々に紐解かれていくのも大きな見どころ。物腰柔らかく人々を癒やしていく青山の姿も、そして“人を殺したことがある目”をした影のある青山の姿も楽しめる『珈琲いかがでしょう』。次回の珈琲も、じっくりと味わいたい。

■放送情報
『珈琲いかがでしょう』
テレビ東京系にて、毎週月曜23:06~23:55放送
(初回~第3話は5分拡大で23:06~24:00放送)
出演:中村倫也、夏帆、磯村勇斗、光石研ほか
第1話ゲスト:足立梨花、貫地谷しほり
第2話ゲスト:山田杏奈、臼田あさ美
第3話ゲスト:戸次重幸、小手伸也、筧美和子、滝藤賢一、丸山智己
第4話ゲスト:一ノ瀬ワタル、山田真歩、池谷美音、野間口徹、松本若菜、光浦靖子
原作:コナリミサト『珈琲いかがでしょう』(マッグガーデン刊)
監督・脚本:荻上直子
監督:森義隆、小路紘史
音楽:HAKASE-SUN
オープニングテーマ:「エル・フエゴ(ザ・炎)」小沢健二(Virgin Music/UNIVERSAL MUSIC)
エンディングテーマ:「CHAIN」Nulbarich(ビクターエンタテインメント)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:合田知弘(テレビ東京)、森田昇(テレビ東京)、山田雅子(アスミック・エース)、平部隆明(ホリプロ)
制作:テレビ東京/アスミック・エース
制作協力:ホリプロ
製作著作:「珈琲いかがでしょう」製作委員会
(c)「珈琲いかがでしょう」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/coffee_ikaga/
公式Twitter:@tx_coffee
公式Instagram:tx_coffee_ikaga

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