坂元裕二はなぜ別れた後を描く? 『最高の離婚』から『まめ夫』に続く“終わった恋”への希望

 4月13日より、『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)がスタートする。本作は、脚本家・坂元裕二が描くオリジナル作品。松たか子演じる大豆田とわ子は、3回の結婚、3回の離婚を経験しており、今も3人の元夫たちに振り回されているという。
その3人の夫を演じるのが、松田龍平、角田晃広(東京03)、 岡田将生と異なる魅力を持つ俳優陣。その関係図だけ見ても十分楽しめそうだが、ここに坂元作品らしい会話の掛け合いが生まれていくのだと思うと、さらに期待が高まる一方だ。

誰もが無知の状態に陥る、恋の終わり

 考えて見れば、多くの恋愛ドラマが「恋の始まり」に焦点を当てることが多いのに対して、坂元裕二は「恋の終わり」を見つめてきた印象が強い。『最高の離婚』(2014年、フジテレビ系)では、永山瑛太、尾野真千子、真木よう子、綾野剛扮する2組のアラサー夫婦が結婚と離婚の間を行き来する様子が描かれた。

 『カルテット』(2017年、TBS系)でも、松たか子と宮藤官九郎が、そして高橋一生と高橋メアリージュンの2組の元夫婦が物語の大きなキーになっており、『スイッチ』(2020年、テレビ朝日系)でも松たか子と阿部サダヲが、別れてからもお互いの恋人を紹介し合う奇妙な関係性を続けている元カップルを演じていた。そして、大ヒットを記録している映画『花束みたいな恋をした』(2021年)でも、有村架純と菅田将暉が恋愛の理想が現実に少しずつ削られていくさまを描いている。

『花束みたいな恋をした』(c)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会

 そこに、今回の『大豆田とわ子と三人の元夫』だ。離婚をしても別れても、なお関わり続ける元夫婦、元カップルは、たしかにドラマチックではある。この「ドラマチック」という言葉は、「現実ではなかなか見られない」のと同義とも言えそうだ。それは恋愛の始め方、プロポーズの仕方、結婚生活に必要なこと……など、恋を続けるマニュアルは多く共有されていても、恋を終えるときのセオリーはなかなか取り上げられない。

 だから、多くの人は恋人や夫婦関係を解消した後、無知な状態で放り出される。「これは正しい別れか?」なんて、誰にもわからない。でも、せっかく人生の一部を共にしたのだから、恨み合って終わりにするよりも、「出会えて良かった」と思える関係性に落ち着きたいものではある。もしかしたら私たちは、坂元作品に「恋の終わり」の先にあってほしい、最後の夢や希望を見ているのかもしれない。

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