若葉竜也の『おちょやん』とは異なる一面も 『街の上で』で過ごす上質な時間

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、新代田在住の島田が『街の上で』をプッシュします。

『街の上で』

 

その制作ペースが衰えることを知らない、今泉力哉監督の最新作『街の上で』。『愛がなんだ』以降も、『アイネクライネナハトムジーク』『mellow』『his』『あの頃』……と作品が相次いでいましたが、コロナ禍の延期を経ての公開となります。

 「この今泉監督作品が観たかった!」という方も多いのではないでしょうか。少しモラトリアム、オフビートで思わずクスリと笑ってしまうようなやりとりが、魅力的な俳優たちによって紡がれていきます。映画の温度は常に低体温ですが、ふとしたときに今泉監督の顔、下北沢に住む若者の顔……“街の上で”暮らす人たちの表情がグッとクローズアップされて浮かんでくるような瞬間があり、群像劇とはこのことである、と改めてひとりごちた次第です。

 「街ってずっと変わるからすごい」というセリフがあります。「人はそれでも生き続ける」的なありがちなエモーションすら感じさせず、ただその動きを丁寧かつ実直に記録しているからこそ、我々鑑賞者にも居心地の悪さを感じさせないのではないでしょうか? 

 今泉監督としてもやりたかった映画を作れたようで、年始に掲載したリアルサウンド映画部のインタビューでは「こういう体制でのみ、映画をつくれるようになっていきたい」とも語っていました(参照:今泉力哉監督と考える、日本映画界の現状 作家にとって理想の環境はいかにして作られる?)。そんな環境の風通しの良さが、本作にも間違いなく反映されているように感じます。

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