『おちょやん』大勝負を前に揺れる鶴亀家庭劇 千之助と万太郎の因縁とは?

 チャップリンの観劇をめぐって対決することになった鶴亀家庭劇と須賀廼家万太郎一座。勝った方の芝居を世界の喜劇王に観てもらおうという趣向だ。しかし、家庭劇では大勝負を前に座員たちの足並みが乱れはじめる。

 『おちょやん』(NHK総合)第67回。一世一代の大舞台に興奮する家庭劇の面々。その中で誰よりもこの勝負に賭けているのが千之助(星田英利)だ。「万太郎に勝ちたないんかい。あいつのことを誰よりもよう知ってんのは、このわしじゃ」。千之助と万太郎(板尾創路)はかつて「須賀廼家兄弟劇」で人気を博した仲。「あいつの首取んのはこのわしじゃ」と千之助は意気込む。

 千之助の強引なやり方に座員は反発。女優はいらないと公言する千之助に香里(松本妃代)やルリ子(明日海りお)は不満をぶつけ、その矛先は千代(杉咲花)に向けられる。千代は「自分だけは特別や思てんねやろ」(香里)、「こびを売るような態度はやめたら?」(ルリ子)と、思ってもみない言葉を浴びせられてしまう。

 14週のタイトルは「兄弟喧嘩」。“兄弟”の因縁が明かされるそばで、千代の置かれた立場も浮き彫りになる。座長の妻として皆の間で取りなしているつもりが、安泰な地位にいると嫉妬され、男たちに媚びていると見られる。千代が「根っからの世話好き」なだけなのだが、女優としてそれでいいのかというルリ子の問いかけは、千代の今後に意味を持ってきそうだ。

 千之助と万太郎の関係はこれまでも随所で触れられてきた。売れない歌舞伎役者だった2人の考えた喜劇は演劇界を席捲するも、その後、千之助と万太郎は別々の道へ。万太郎に金を取られた、いいなずけを寝取られた、父の一座を乗っ取られて復讐しようとしたがバレて追い出された、など理由は諸説あるが、実際に何があったかは知られていない。

 ただ一つ言えるのは、千之助は万太郎から切り捨てられたということだ。千之助は万太郎を恨んでいる反面、どこか避けているような雰囲気もある。万太郎を前にすると、千之助は落ち着きがなくなる。対する「喜劇王」万太郎は堂々としたもの。役者として互角の力量を持つ2人が、なぜたもとを分かつようになったのか? 因縁の対決を前に真実が明らかになる。

 千之助と万太郎を演じるのは星田英利と板尾創路。芸人であり、実力派俳優としても活躍する芸人俳優の双璧と呼べる存在だ。芝居の中に笑いを追求する本作で、実力伯仲の2人がどんな笑いを届けてくれるか期待したい。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/