高橋一生演じる日高の心の声を代弁? 『天国と地獄』は“鈴の音”に注目

 主人公は、やんちゃで癇癪もちの秋山篤蔵(佐藤健)。人間的には弱い面も多いのだが、のちに「天皇の料理番」になるほどに料理の才を発揮する。そんな篤蔵と縁談で結ばれ、夢追い人の彼を深く愛したのが俊子(黒木華)だった。

 俊子は、篤蔵からもらった安産祈願のお守りについた鈴を大切にし、生涯にわたって肩身離さず持ち続け、「自分の一部のようなものです」とまで話した。「チリリン」と鳴ると、篤蔵を愛しんだり、切ない思いをしたりする俊子の思いが代弁されているように聞こえる。

 のちに俊子は病に侵され自らの死を悟ると、「篤蔵さんは癇癪持ちだから、この鈴が鳴ったら、あいつがそんなこと言ってたな、と思い出してください」と篤蔵に鈴を返した。おかげで篤蔵は、戦後にGHQの接待でアメリカ人に侮辱されて怒りそうになっても、鈴の音に助けられ事態を好転させることができた。篤蔵から俊子へ、そして俊子から篤蔵への愛情が巡り巡った奇跡の瞬間だった。切っても切れない篤蔵と俊子の縁を象徴したのが、“鈴”だったのだ。

 “鈴の音”は、古来より人間の営みや精神生活において大きな役割を果たし、宗教的に神を引き寄せる道具であったり、生活の中で何か知らせを告げたり所在を把握したりするものとして機能してきた。『天国と地獄』では日高の声ならぬ声として、『天皇の料理番』では篤蔵と俊子の縁、もしくは俊子からのお告げとして。鈴の音は、人物同士が紡ぐヒューマンドラマを構築するための大切な布石を示す役割を果たしているといえる。

 その上で今放送されている『天国と地獄』で“鈴の音”に着目してみると、新たな謎となり得る発見があり、さらなる推理や深読みが捗る。ぜひ耳を澄ましてみてほしい。

■桒田萌
ライター。1997年大阪生まれ、京都市立芸術大学卒業。関西を中心に、雑誌やWEBでクラシック音楽やエンタメ分野の記事を書いています。Twitter

■放送情報
日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』
TBS系にて、 毎週日曜21:00~21:54放送
出演:綾瀬はるか、高橋一生、柄本佑、溝端淳平、中村ゆり、迫田孝也、林泰文、野間口徹、吉見一豊、馬場徹、谷恭輔、岸井ゆきの、木場勝己、北村一輝
脚本:森下佳子
編成・プロデュース:渡瀬暁彦
プロデュース:中島啓介
演出:平川雄一朗、青山貴洋、松木彩
製作著作:TBS
(c)TBS

 

関連記事