深川麻衣、我を通してきた分岐点の選択 上京から乃木坂46卒業まで、決断は“頑固”に

「全力で楽しむ余裕を持って仕事をしていきたい」

ーー映画の撮影では“苦しいこと”もあったようですね。

深川:ありましたね……毎日ありました。結子みたいに喜怒哀楽がストレートに表に出る役は、自分の中でまた新しいチャレンジでもありました。映画の中で後々響いていくための演出でもあったのですが、今回は熊澤監督が“怒りの感情”にものすごくこだわっていらっしゃったんです。そんな中で、すぐにその演出に応えることができなかったり、そういうシーンが続いてしまうと、落ち込んでしまうことがありました。その日撮影が終わってホテルに戻ってから、「あそこはこうできたんじゃないか」というのを1個1個考えたり。でも、そんなに引きずってもしょうがないので、寝てリセットして、「明日も頑張るぞ!」という気持ちでまた次の日現場に向かい、また……みたいな、その繰り返しでした。ただ、スケジュールがすごくタイトな中で、熊澤監督も本当にこだわって妥協せずに向き合ってくれました。すごく丁寧に撮影してくださったので、それは本当にありがたかったです。

ーー“怒りの感情”を表現することに苦戦したと。でもたしかに深川さんには“怒り”のイメージがあまりないかもしれません。

深川:私自身怒ることもあるんですけど、怒りの出し方って本当に人それぞれじゃないですか。怒ったら無口になるタイプの人もいるし、あからさまに表情や言動に出てしまう人もいる。私は結子と同じくらいの怒りの感情を抱えていても、たぶんそれを誰かに言葉でぶつけたりは比較的できないタイプなんです。なので、その怒りの出し方もそうですし、どこまでの大きさで出したらいいのかなど、そういうことは監督と相談しながら撮影していました。

ーー熊澤監督が脚本を書いたのは9年前とのことですが、作品のテーマ的にはどこかいまの社会状況とリンクするところがありますよね。

深川:そうなんです。撮影中はもちろんこんな状況になるなんて全く思ってもいなかったんですけど……。この映画は、写真を通して人と人とのつながりを描いているお話ですし、2020年になってから一気にいろんな状況が変わってしまったことで、私自身も自分がエンタメのお仕事をさせていただいている意味みたいなことをより考えるようになりました。公開時期的に、まだ心から安心して映画館に行けないという方もきっとたくさんいると思います。でも、こういうタイミングで公開されるからこそ、この映画をきっかけに、ちょっと疎遠になっているおじいちゃんやおばあちゃんに対して、会いに行くことはできないかもしれないけど、ちょっと電話をしてみようとか、話してみようとか、そうやって大切な人とのつながりを少しでも近くしてくれる映画になったらすごくうれしいです。

ーー事務所の先輩である高良健吾さん、香里奈さん、井浦新さんとの初共演はいかがでしたか?

深川:いつかは先輩と同じ作品に出てみたいとずっと思っていたので、すごくうれしかったです。お三方とひとつの作品でがっつりお仕事をさせていただけるとは思ってもいなかったので。もちろん事務所の先輩後輩という関係性ではあるのですが、同じ事務所の先輩だからこそ、近くで見ていてくださる安心感がものすごくあったし、時には兄弟みたいのようでもありました。私が悩んでいるときに、それを察してさらっと声をかけてくださったり、すごく気にかけてくださって。その気持ちがすごくうれしくて。今回は本当に先輩たちの存在に救われた部分が大きかったです。

ーー約3年ぶりの主演映画になりましたが、先輩方のサポートが大きかったわけですね。

深川:そうですね。今回は主演とはいえ、自分のことで結構いっぱいいっぱいになってしまったりもしましたし、本当に頼もしい先輩方に囲まれた中での撮影だったので、甘えてしまった部分も大きかったです。先輩たちの仕事に対する姿勢を見ていて、これからお仕事をしていく上で、自分もこんなふうに力をつけていきたいと思いましたし、もし自分が後輩の子とお仕事をする機会があれば、先輩からしてもらったことを自分もしてあげたいなと思いました。やっぱり自分の中での“主演”や“座長”って、自分の仕事もしっかりするけど、なおかつ周りが見えていて、人をまとめるイメージなんです。なので今回は、もうちょっと楽しむ余裕を持ちたいなと感じました。

ーーこの『おもいで写眞』からスタートしていく2021年、どういう年にしていきたいですか?

深川:3月でちょうど30歳になるんです。なので、この作品が自分にとっては20代最後の映画作品になります。30代に入っていくこれから、どういう作品に出会えるのかも楽しみですし、年齢を重ねていくごとにきっといただく役もどんどん変わったり、求められるものも変わってくるのかなと最近漠然と感じています。そんな中で、尊敬できる先輩を見て思ったように、仕事としてちゃんと向き合いながらも、全力で楽しむ余裕を持って仕事をしていきたいなというのがいまの目標です。

■公開情報
『おもいで写眞』
全国公開中
出演:深川麻衣、高良健吾、香里奈、井浦新、古谷一行、吉行和子
監督:熊澤尚人
脚本:熊澤尚人 まなべゆきこ
原作:『おもいで写眞』熊澤尚人(幻冬舎文庫)
主題歌:安田レイ「amber」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作プロダクション:スタジオブルー
配給:イオンエンターテイメント
(c)「おもいで写眞」製作委員会
公式サイト:http://omoide-movie.com

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